第4話 高校には知り合いがいないので、黒板か床しか見ていない
昼休みは大体寝たふりをして過ごしている。
最初の内はスマホで適当な動画を見ていたけど、
「どんなの見てんの?」
「え、何それ知らん」
「つまんね」
という身も蓋もない無双三段に、俺の心は完全に折れてしまっていた。
寝ていればとりあえず話は振られないし、好きなものを貶されることも無いので最適解である。
「……」
そのはずだったのだが、俺は今、高校生活で最大級のピンチに陥っていた。目の前に誰かがいるのだ。
机に突っ伏して寝たふりをしているが、その異様な圧迫感と、周囲の妙な静けさに、何か滅茶苦茶ヤバい存在が目の前にいるような気がするのだ。
なんだろう、昨日、夕飯に三色チーズ牛丼特盛温玉付きを頼んだのが不味かったんだろうか?
それとも最近「猫語が通じる人間」として野良猫ネットワークに広まってしまったことに関係が?
……後者かなぁ、通学路だけで三回くらい撫でさせられたり猫の集会に呼ばれたりしてたし。
――ばんっ!
「っ!?」
つ、机叩かれたっ!? 怖っ! 絶対ろくでもない奴じゃん!
もうこうなると全てを諦めて起きるしかない。
日陰に生えてる苔みたいな俺に、なんでこんな不幸が……
「は、はぃ……何でしょぅ……」
なるべく刺激しないように、小さな声で返答する。意外なことに、目の前にあるのはピシッとした女子制服だった。
「……」
しかし返答がない。不思議に思って顔を上げると、綺麗な黒髪が目に入った。
綺麗な人だった。毎日アイロンをかけているかのような制服に、後ろにまとめられた真っ直ぐな黒髪、生徒たちの模範となるべくして、ととのえているようだった。
「あの……」
「っ!」
いつまでも見つめ合っているのも気まずいので、声を掛けようとしたけど、その瞬間に怖い人は後ずさり、そそくさと教室を出て行ってしまった。
……誰だろう、見覚え有るんだけどなあ。
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