21. 在りし日の空港にて
それはまだ、真陽たちがこどもの頃の話。
雅司の母、つまりは真陽たちの祖母が、一週間の沖縄旅行から帰ってくる。
その迎いに、どういう訳でか、家族皆で空港まで迎えに行った。
非日常とは、言葉を変えるとイレギュラーだ。トラブルもつきもの。そういった時、音無家の中の「誰が」なんていうのは、考えるまでもないことで。
「あれ? 悠也?」
そう。生粋の迷子っ子の次男、悠也だ。また、いなくなった。
そうなると、真陽の行動は速い。
「じゃ、探してくるねー」
なんでもないことのように言うが、ここは空港。しかもその端っこだ。
「わかるの?」
「ん? どうだろう」
心配する母に、あっけらかんと笑い返す末っ子。
もはや「勘」でしか探せない。ただ。
「なら……」
「行ってくるねー!」
「えっ、ちょっと……!」
十数分後。
「ゆう連れてきたよー」
真陽のこういう時の勘は、なぜかよく当たる。
全然迷子っぽくない悠也を連れて、笑顔で戻ってきた。
聞けば、悠也は皆のいた場所から端に位置するところでうろうろしていたと。
ちなみに、この頃は悠也はもちろん、まだ真陽も電話を持たされていない。もし真陽も迷子になっていたら、二次災害もいいところだった。
そしてこのような事態は、一度きりではなく何度か起こったとか。
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