3. 兄妹3人、川の字に眠る

 真陽がまだ産まれていなかった頃。

 旭と悠也は、あまりテレビアニメや子ども向け番組に、興味を持っていなかった。

 それが。

 真陽が生まれ、そういうものを見るようになってから、だんだん変わっていったとか。

 今では、真陽などよりずっと熱心に見ている。不思議なものだ。


 旭と悠也は、いわゆる「年子」だ。

 二人と真陽では、歳が片手の指の数ほどは離れている。

 

 「妹」という存在は、両親やその周りが思う以上に、二人に大きな影響を与えていた。

 長男、旭は彼女を、わりとちゃんと「妹」なのだというのを認識している。

 しかし、次男の悠也は。どちらかというと「珍しいおもちゃ」のような感覚に近いのかもしれなかった。うっかりすると、ベビーベッドから落としかねない。

 そんな、「妹の危機」に立ち上がるのは、意外にも旭だった。

 悠也がちょっかいをかけようとすれば、出ない声を頑張って張り、弟を威嚇して。

 真陽が「はいはい」をできるようになれば。

 彼女の進行方向にある、ありとあらゆる「敵」となるもの。例えば、悠也本人だとかも。

 それはもう、一生懸命に体を張って。

 まるで、彼なりに

「自分がこの子を守らねば!」

 という程のものだった。



 そのうち。

 なんとなく、悠也も真陽という「人間の赤ちゃん」を、恐らくは認識したのだろう。

 真陽が先か、悠也が先か。

 二人がごろりと、布団で寝転び。そのうちにスヤスヤと寝息をたてる。

 するとそこに、旭がやって来る。そして。


 文字通りの「川の字」になって、三人で眠る。


 そんな事が、わりと日常的だったとか。

 ……今となっては、昔の話。

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