18. トーキングエイドなるもの

 どれほどのひとが、この存在を知っているのだろう。

 それは、旭の仕事での相棒とも言える物……である。たぶん。


 ──トーキングエイド。

 言語障害や身体障害などで会話や筆談が困難な人のための、携帯型コミュニケーション機器を、そう呼ぶ。

 イメージ的には、50音のひらがなのボードで、ボタンを押すとそのひらがなの音が鳴る。ちなみに、先に入力して、連続の「おはよう」などを鳴らせることも可能。なので旭は、よく使う言葉は前もって記録させている。


 けれど、いまは廃盤になっているとかいないとか。正確には、現代のニーズに合わせた、というべきか。

 今使用しているのが壊れたら、タブレットになる、と聞いている。


 さて。ここで彼には難題がある。

 実は、スマートフォンでも、そのようなアプリはあり、工夫次第でいかようにも変化させられるのだが。


 如何せん、旭は文字入力が苦手なのだ。

 一番の理由は「ひらがなを覚えきれていない」から。

 旭に限ることではなく、人は、ソレを使わなければ使わないほど、忘れやすい。

 休日、1人で出歩くのが好きなわりには、

「覚えなくても困らない」

と主張する。


 旭は、「根拠のない自信」を持つところがある。昔から、おそらく今でもだ。

 それらはいつも、まわりを戸惑わせる。なにせ、パッと見では健常者と見られる体格と顔つきなのだ。


 ──さて、つぎは。

 そんな旭と、なんとか彼の解読を試みる真陽の会話を。

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