10. 真陽の最凶の出会い、壱

 一緒にいるうちに、その井浦梨子という少女は、だんだんと持ち前のワガママさを発揮しだした。


 例えば、小学校の帰りの通学路。

 真陽が自分の道を帰ろうとすれば。

「わたし、この後ずっと1人になるんだけど」

 それは、お互いさまのはずなのだが。

「じゃあ、わたしが不審者に攫われてもいいの!?」

 そうまで言われては、何も返せない。しかも、二人の家が中途半端に歩けなくない距離だったのも悪い。けれど、梨子の通学路は、真陽にとってはひとふた周りほどの遠回りな道だ。

 けっきょく、梨子の押しに負けたのだった。



 その当時、梨子はこんなことを言っていた。

「わたし、いつか死ぬから」

 とは言うが、言葉ほどに切羽詰まった感じではなかった。少なくとも真陽はそう感じた。

 とはいえ。

 ちょっとしたきっかけで、その言葉を、その当時の担任に言うと。

「井浦は、死にたいって言ったんだぞ!!」

 と、いわば公開説教を成した。

 それを機に、梨子も女子の輪に入れるようになった。そこで自信がついたのか、なんなのか。


 真陽の後ろから、グルリと前に回ってきて、こんなことを言うようになった。

「わたし、この子の通訳です!」

 

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