10. 真陽の最凶の出会い、壱
一緒にいるうちに、その井浦梨子という少女は、だんだんと持ち前のワガママさを発揮しだした。
例えば、小学校の帰りの通学路。
真陽が自分の道を帰ろうとすれば。
「わたし、この後ずっと1人になるんだけど」
それは、お互いさまのはずなのだが。
「じゃあ、わたしが不審者に攫われてもいいの!?」
そうまで言われては、何も返せない。しかも、二人の家が中途半端に歩けなくない距離だったのも悪い。けれど、梨子の通学路は、真陽にとってはひとふた周りほどの遠回りな道だ。
けっきょく、梨子の押しに負けたのだった。
その当時、梨子はこんなことを言っていた。
「わたし、いつか死ぬから」
とは言うが、言葉ほどに切羽詰まった感じではなかった。少なくとも真陽はそう感じた。
とはいえ。
ちょっとしたきっかけで、その言葉を、その当時の担任に言うと。
「井浦は、死にたいって言ったんだぞ!!」
と、いわば公開説教を成した。
それを機に、梨子も女子の輪に入れるようになった。そこで自信がついたのか、なんなのか。
真陽の後ろから、グルリと前に回ってきて、こんなことを言うようになった。
「わたし、この子の通訳です!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます