17. ちょうど良いテンションと呼びかけ

 とある休日のこと。

 師走ともなると、寒い。とても寒くなる。

 悠也はとにかく、季節の変わり目や、寒さには弱い。

 簡単にいうと、お腹を下しやすくなる。

 だというのに、夜に冷たいものを飲みたがる。

 七瀬は困っていた。

 その日も、本人が「夜飲む用」としてカフェオレが冷蔵庫に常備されていたのだが。


 真陽と悠也が、こんな会話をした。

「ねぇ、ゆう。カフェオレ今飲まない?」

「あ、あとにしとくー!」

「えー? 今一緒に飲もうよー」

「いいのー!」

 後でいい、の一点張り悠也にも、真陽はめげない。

 ふと、真陽は言葉を思いついた。

「ねえ、今一緒に乾杯しようよ」

「カンパイ?」

「そ。かんぱーい!って、して。一緒に飲もうよ」

「カンパイね。あ、はい! わかったー!」

 どうやら「カンパイ」の単語に心惹かれたようだ。


 このようなことは、日常生活の中で実はけっこうある。

 悠也はキャッチーなフレーズに弱い。そして真陽が思うに、「一緒に」という言葉も好む傾向がある。


 ある時は、悠也の好みとは違うトレーナーに、真陽が

「いいじゃん、『みどりさん』だね!」

 名前をつけることで、悠也のなかの何かのツボをつく。

 あとは、「テンション」も大切だ。

 言葉に表すのは難しいが、あえて言うなら。

 軽すぎず、重すぎずに、テンポよく。

 どうも悠也の中では、真陽のテンポが上手く刺さる瞬間がある。



 拝啓、???


悠也はほんっとうに、朝起きない。よく分からない。

お父さんが隣でずーっと

「ゆう! 朝だよ起きて!」

って言っても。

お母さんが

「お母さん出かけちゃうよー? いいの?」

にも、起きない。

 でも一番分からないのは。

「ゆうー、朝だよ起きてー」

「……はーい!」

びっくりするくらい、私の声だと起きるの早い。

 本当、なんで??

もし、私の声の目覚まし時計が作れたら、どうなんだろう。

 いやいや、そんなのは出来る訳ないんだけどね。

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