埋蔵金の噂 5
学校内で埋蔵金のうわさが飛び交っていることは、カトリ先生たち教員の間にも知られているみたいで、先生たちもどう対処しようか困っているみたいだ。
「確かに3年や2年の生徒たちが、ちょくちょくそんな話をしているな。俺たち教員もあまりいい気はしないが…………かといって面と向かって「埋蔵金の話題はやめろ」とも言えんしなぁ」
なるほど確かに、埋蔵金なんていう信ぴょう性の薄い噂が流行ったところで、何が悪いとも言いにくいし、この手の噂は止めようとする方が逆効果なんだろうな。
そう考えると「試したけどダメだった」という事例を作って、噂を自然収束させるというユーコ会長の目論見はそれなりに的を射ているような気がしてきた。
「けどよセンコー、この学校は戦前からあって、校舎も何度か建て替えてる聞いたぜ。それなのに、なんで今更埋蔵金の噂なんて流行るんだ?」
「そんなこと俺に聞かれてもなー。俺だってこの学校に雇ってもらえたのは去年なんだぜ? 学校にまつわる怪談噺の一つも知らねぇのに、埋蔵金なんてなぁ…………あーでも待てよ、確か姫木学園は第二次世界大戦の最中に敷地の一部を軍に貸していたと何かの資料で見たことがあったな。それに、この辺一帯にはいくつか軍需工場があったんだっけな。もしかしたら埋蔵金ってのは、旧日本軍がこの辺に何か隠したみたいな妄想が独り歩きしたのかもな」
「旧日本軍!? な、なんか一気に怖くなってきたんだけど…………埋蔵金って銃弾や爆弾とかじゃないでしょうね?」
旧日本軍と聞いて、リンネの顔が急にひきつった。そして僕も血の気が引くのを感じた……………埋蔵金っててっきり時代劇に出てくるような大判小判とか、ツボの中に入った大量の古銭みたいなのを連想していたのに、軍隊由来のものだとは思わなかった。
埋蔵金なるものの正体が、リンネの言うような爆弾や銃だったら、古いものだとしてもかなり危険なんじゃないかな…………。
「おいおいアイチ、ツキガセ、ひょっとしてあるかどうかもわからねぇモンにビビってんのか? ちょと気がはえぇんじゃねぇの?」
「はっはっは! まぁ、実際に埋蔵金探しする奴なんかいないだろうし、噂んてそのうち収まるだろ。さ、じゃあ俺はまだやることがあるから職員室に戻るぞ」
『おつかれさまでーす』
片手に持っているファイルをひらひらさせながら、職員室に戻っていくカトリ先生。
初めて話したけど、なかなか親しみやすそうで、いい先生だったな。
中学の頃はあまりいい先生がいなかったから、変な先生だったらどうしようかと思ってたんだけど、カトリ先生が顧問だったら安心できそうだ。
…………顧問まで家に来るようなことにならなきゃいいけど。
「へぇ~、あの先生が顧問なんだ。爽やかだし、イケメンだし、面倒見よさそうだし、いい感じじゃない!」
「僕もリンネと同感だよ。親身に相談に乗ってくれそうな感じもするし。ユーコ会長が暴走しだしたら、顧問に言えば止めてくれるかもしれない」
「どうだろうな。うちの会長、なぜかセンコーと馬が合わないみたいだし。でも、センコーが生徒から人気があるのは確かだぜ! もしかしたら会長は、あーゆー爽やか熱血教師みたいなのは好きじゃないのかもしれんな」
あんないい先生と馬が合わないなんて、ユーコ会長は相変わらずひねくれてるな。
そんなに好き嫌いが激しいから、生徒会も無視されるんじゃないかって、少し心配になってきた。
「というわけで、生徒会室が新しくなるのは来週月曜日だってさ。よかったじゃねーかアイチ、会長に部屋の抜き打ちチェックをされないで済むかもしれないぜ!」
「でもあたしは、これからも週一くらいで『第二生徒会室』に集まりたいなー。学校の生徒会室と違って、集まってしゃべるのにはちょうどいいし、ササナ先輩のお茶が飲み放題だし、ゲームもできるし、お夕飯もごちそうになれるし!」
「リンネは生徒会室に何を求めてるの?」
結局、そのあとすぐにユーコ会長から『第二生徒会室集合』のメールが届いて、三人でいそいそと帰宅することになった。
生徒会室の工事が終わったら、この流れも少しは減るといいんだけど……。
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