僕の家は第二生徒会室
南木
姫木学園埋蔵金騒動
僕の家は第二生徒会室 1
ポケットの中で震えたスマホを取り出して画面を開くと、ユーコ会長からのショートメッセージが入っていた。
『生徒会役員全員、今日も第二生徒会室に集合ね』
今日も
僕――
少しは友達を作る時間も欲しいけど、結局ユーコ会長に逆らう気が起きず、しぶしぶ帰り支度を始める。
あぁ……このままじゃ、クラスの中でボッチ確定だろうな。僕はただでさえ影が薄いうえに、この学校は私立だから中学の時からの友達もあまりいないし。
「ん、そういえばリンネがいない。呼び出されてるなら一緒に行こうかと思ったのに」
教科書にカバンを詰めながらなんとなく回りを見ていると、同じクラスメイトで、僕と同じく生徒会役員の
なんだか少し嫌な予感がするけど…………気のせいだと思うことにして、僕はそのまま校舎内のどこにも寄ることなく下校した。
「あら、ずいぶんと早かったのね、アキ」
「お邪魔してます秋穂さん」
「その……おかえり、アキホっ」
家に帰ってまっすぐリビングに入ると、そこにはすでに各々の定位置に着席している女子3人の姿があった。
女子高生3人集まっているのを見ると、自分の家に帰ってきただけなのに、すっごくアウェー感を感じる。
「……玄関先に置いてある自転車で大体察したけど、ユーコ会長にササナ先輩、それにリンネまで、わざわざ僕より先に来るなんて」
「アキ、ここはもう学校じゃないんだから、きちんと『ユーコ姉さん』と呼びなさい。生徒会長として公私混同は許さないわ」
「公私混同自体を公私混同しているユーコ姉さんには言われたくないんだけど」
姫木学園の生徒会長を務める、ユーコ姉さんこと
ロングの黒髪に長身かつスレンダーな体形、それにやや儚げに見えるけど知的でクールな表情と性格と、まるで大学生のような大人っぽさのある美人なんだけど……いろいろと変な拘りがあるうえに、無駄に行動的なせいで、昔からの知り合の僕にとっては、一緒にいるととても疲れる難儀な人でもある。
「とりあえず、私はお茶を入れてきますね。今日は私のおすすめのお茶を持ってきましたので、台所をお借りしてもよろしいですか?」
「そんな、ここは僕の家なんですから、お茶くらい僕が淹れますって」
「いえいえ、私が皆さんに美味しいお茶をごちそうしたいんですもの。秋穂さんは先に座っててくださいな」
ユーコ姉さんと同じく3年生で、生徒会書記をしているササナ先輩こと
ユーコ姉さんと同じく、絹のような長い髪の毛に少し背が高めだけど、受ける印象はほぼ真逆で、とても優しくて明るく朗らかな人。けど、ユーコ姉さんの数少ない親友の一人だけあって癖もかなり強くて、時々物事を強引に押し通してくるのが厄介だ。
最近は市販のお茶に凝っているらしくて、ことあるごとにお茶を淹れようとしてくれる。
とてもありがたいけど、下級生の僕が上級生に自宅でお茶を淹れてもらうなんて、なんだか落ち着かない。
「あ、あたしはほらっ! 帰る途中で無理やりユーコ先輩に連れてかれちゃって! それ以外には他意はないっていうかっ!」
「……なんでリンネはそんなに焦ってるの?」
「焦ってなんかないわよっ! ただ、姉さんたちに強引に連れてこられたとはいえ、アキホより先にお邪魔したのは悪かったかなって…………」
そして、若干挙動不審な最後の一人――――リンネこと月ヶ瀬鈴音は、さっき教室を見た時に居なかったクラスメイトだ。
やや赤みがかったショートヘアに勝気な表情、年齢のわりに凹凸の激しい体つきをしていて、見ているとちょっとドキッとしてしまう。それさえ意識しなければ、結構さばさばしていて、まるで男友達のように思えるんだけどな。
「あのー、ユーコ姉さん。僕の家で生徒会の話し合いをするのは今回で5回目だけど……学校の生徒会室の工事が終わったら、ちゃんとあっちに戻るよね?」
「そうね……私としては学校からほどほどの距離で、しかも小さいころから慣れ親しんでるこの第二生徒会室を、そのまま正式な生徒会室にするのも悪くないと思っているわ。二人もそう思わない?」
「ええ。秋穂さんの家はそこそこ広いですし、台所もきれいで、何となく落ち着くので私は好きですよ」
「私もー。一人で家にいるよりよっぽど楽しいし。ねぇアキホ、表札の隣に『姫木学園生徒会室』って看板付けない?」
「そんなこと言わないで、生徒会室の工事が済んだらちゃんとあっちに戻ろうよ! 本当なら生徒会は校内に居なくちゃダメでしょ!」
そう――――ユーコ姉さんが何度も口にしている「第二生徒会室」というのは、ここ、僕ん家のリビングのことだ。
肝心の姫木学園の生徒会室は、なぜかこの時期に工事をしていて使用できず、生徒会の話し合いをするのに別の場所が必要…………なのはいいけど、ユーコ姉さんとリンネが昔から僕の家を知っていたのと、高校からの距離が生徒会メンバーの中で一番ちょうどいいということで僕の家に白羽の矢が立ってしまい、こうしていつの間にか生徒会のたまり場になってしまったんだ。
「それよりもユーコ姉さん、何で僕に声を掛けないで先に来てるの? 学校で直接声を掛けてくれてもよかったのに」
「大した用事じゃないわ。私たちはただ…………アキの部屋で、エロ本を探していただけよ」
「うおおおぉぉぉぉいっ!!?? 人ん家で何してくれやがりますかっっっ!!!」
僕は驚きのあまり、近所迷惑になるくらい大声で叫んでしまった…………
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