埋蔵金の噂 4
放課後――――掃除当番だった僕は、同じく当番だったリンネと一緒にゴミ捨て場から教室に戻る途中で、なんとなく工事中の生徒会室の様子を見に行くことにした。
何しろ、生徒会に入ってから一度も入ったことがないから、いつになったら入れるのか僕もリンネも気になっているんだ。
「ユーコ会長の話では、生徒会室の工事は今年の3月はじめからずっとやってるんだってさ」
「新学期に合わせて工事を終わらせようとしたのかなー? でも、校舎全体ならともかく、なんで生徒会室だけなんだろうね」
「防音工事でもしているんだろうか」
「生徒会室にカラオケを導入するつもりかしら?」
「それとも、釣り天井作ってる……とか」
「釣り天井って?」
「ほら、ファンタジーとかでよくある、突然天井が降ってきて中にいる人がぺしゃんこになるっていう」
「なにそれこわい……あたしたち、ぺしゃんこにされるの!?」
そんなことを話しながら、1階の職員室の隣にある生徒会室の前に行くと、見るからに小さい男子が男の先生と話しているのが見えた。
男子がアーモン先輩だというのはすぐに分かった。けど、話している相手の先生は誰だか分らない。2年の担任の先生なのだろうか?
僕が声を掛けようか一瞬迷っている間に、即断即決のリンネが先に声を掛けた。
「アーモンせんぱーい!」
「ん? おぉ、ツキガセにアイチか……」
「『アーモン先輩』? はっはっは、また愉快なあだ名付けてもらったじゃないか『受け弾正』!」
「わ、笑うことないだろセンコー!」
「せ……センコー!?」
アーモン先輩が先生をいきなり「先公」呼ばわりしたから、僕は一瞬焦ってしまったけど、先生は全く気にしていないようだ。
「あー、そういやお前らはまだ会ったことなかったっけ。センコーは俺のクラスの担任で、あと一応俺たち生徒会の顧問だ。というわけでセンコー、こいつらは会長が連れてきた新しい生徒会役員どもだ」
「そうか、君たちが新しく生徒会に入った一年生か! 俺は
そう言って香取先生は白い歯を見せながらニカッと笑った。
なるほど…………香取先生→カトリ先生→蚊取り線香→センコーってわけか……。亜門先輩のことをアーモン先輩と呼び始めた僕が言えたことじゃないけど、先生にそんな失礼なあだ名をつけていいんだろうかと思ってしまう。
僕はとりあえず、フツーにカトリ先生と呼んでおくことにした。センコーって呼ぶのは、もう少し気心知れた中になってからにしよう……
「1年の二人はずいぶんと仲がよさそうだが、同じクラスかな」
「は、はいっ! あたし、月ヶ瀬鈴音っていいます! 1年6組です!」
「僕も同じく1年6組。間地秋穂です。……あの、カトリ先生、実は僕たち生徒会役員なのに、まだ生徒会室に入ったことがなくて」
「いつになったら終わるのかなと思って、見に来たんです」
「生徒会室の工事なら、来週の月曜日には終わるぞ。水道管の工事だったんだが、部屋自体が古かったからついでに新しくなってるかもしれないな。お前らも生徒会室に集まれないで不満かもしれんが、代わりに空いてる教室を使うくらいなら俺が許可出してやるぞ。ま、それか、終わるまではカラオケとかで親睦を深めるとかすればいいんじゃないか?」
親睦を深める……ねぇ。
言われるまでもなく、すでに何度も僕の家が生徒会室の代わりになってるし、週末には親睦の為に古墳公園に遠足に……というか、埋蔵金の発掘調査に行くんだけど…………さすがに、そんなことは話せない。
あ、そうだ。埋蔵金で思い出した。ついでだから先生に聞いてみようか。
「先生、つかぬ事をお聞きしますけど、この学校に埋蔵金があるっていう噂は聞いていますか?」
「埋蔵金の噂?」
カトリ先生は一瞬顔をしかめたけど、すぐに思い当たることがあったようで、顎に手を当てながら「そうだなぁ……」とつぶやいてから、話してくれた。
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