ドジっ子たちの生徒会室 3
ピシャリと閉められた扉を前に、僕はただただ立ち尽くす。
埋蔵金の重要な手がかりになるはずだった古い鍵が、カトリ先生に無理やり奪われるように持っていかれてしまった…………どうしよう、ユーコ姉さんにバレたら何て言われるか……
「あ……アキホ!? 大丈夫!?」
「そんな……僕のせいで」
このままじゃまずいことはわかってるのに、頭が真っ白になって体を動かせない。
というか、カトリ先生はなんでよりによってこのタイミングで? しかも、話が漏れ聞こえたとはいえ、勝手に人のものを落とし者扱いして取り上げるなんて……
おかしい…………何かがおかしい
リンネが心配そうに僕の顔を覗き込んでる間にも、頭の中には疑問が次から次へと湧き上がってきて、パンクしそうになってきている。
今は落ち着いて……少し情報を整理した方がいいのか? と、考えている間もなく、再び扉が勢いよく開いて、体操着姿のユーコ会長とササナ先輩が現れた。
「待たせたわね。あの勘違い熱血体育教師のせいで、こんな日に限って昼休みにまでずれ込んだわ」
「ふふっ、優古さんの予想通りでしたね。もう二人とも自分の席を確保しているみたいです」
「げっ!? ユーコ会長!?」
「なにが「げっ!?」よリンネ…………それにアキも、何こんなところに突っ立ってるのよ? ……………まさかとは思うけど、鍵をなくした、とかしてないでしょうね?」
あぁ、会長はもうお見通しか。これはもう下手に隠し立てしても無駄だね。
僕は覚悟を決めて床に跪いて、正直に話すことにした。
「申し訳ありません会長」
「あら? あらあらあら!? 急にどうしたのですか秋穂さん」
「僕が持っていた鍵は、顧問のカトリ先生に没収されました」
「会長っ! その、アキホだけが悪いんじゃないんですっ! あたしがアキホに鍵を見せてほしいって言ったから…………」
僕が深々と頭を下げる姿に、ササナ先輩は困惑し始め、リンネはわざわざ僕とをかばってくれようとしてくれた。
そしてユーコ会長はさぞかし怒っていると思いきや…………
「顧問の先生が……鍵を?」
「はい……僕が油断している間に、ぱっと取っていかれて……」
「急いでついてきなさい。まだそう遠くに行っていないはずよ」
「会長、その……怒らないの?」
「今はそんなことしている場合じゃないのよ」
ユーコ会長はササナ先輩を連れてすぐに行動を開始した。
僕とリンネはお弁当を食べかけだったけれど、慌ててユーコ会長の後に続いて生徒会室を出た。
一体どこに向かうのか? 聞こうと思っても、今のユーコ姉さんはものすごいピリピリしたオーラを発していて、迂闊に声を掛けられない。それにササナ先輩も、困惑するどころか珍しく表情を引き締めて、ユーコ会長の隣を全く同じ歩幅で歩く。
僕たちが発する異様な雰囲気に、廊下の先ですれ違う生徒たちの誰もがそそくさと道を開けてくれた…………。
そうして僕たちがまず向かったのは、生徒会室からすぐのところにある職員室だった。
「可能性は低いけれど、当たるとしたらまずここね」
「失礼します、生徒会ですが、香取先生をお見掛けしませんでしたか?」
お昼休み中の職員室では、多くの先生たちがのんびりお昼を食べたり昼寝したりしていたけれど、その中にカトリ先生の姿はなかった。
そこでユーコ会長が目を付けたのは、入り口近くにある談話スペースでお弁当を食べている三人の女の先生――――そのうち一人は、僕のクラスの担任、
「香取先生? あれ、さっき生徒会室に行ったと思ったけど、違うの?」
「えぇ、そうなのですけれど、その香取先生がよりにもよってアキの私物を勝手に落とし物扱いして持って行ってしまったのです」
「まぁ!? 間地君の私物が?」
保険の先生によると、香取先生は職員室を出てからここに戻ってきてないらしい。
そして桃原先生は、自分のクラスの生徒がカトリ先生に私物をとられたと聞いてとても驚いていた。
けれども、数学の先生の反応は冷淡だった。
「あなた、今年の生徒会に入った生徒? その私物は学校に持ち込んでいいものだったのかしら? そうでなかったら、没収されても仕方ないわ」
「……1年6組の間地です。先生の言い分も一理ありますが、それ以前に生徒の私物を没収するにしても、何の校則違反でどんな理由があってということを言い聞かせるのが普通なのではないでしょうか。それとも、名門姫木学園は先生の裁量で生徒のものを勝手に取り上げてもいいことになっているのですか? それはいくらなんでも前時代的かと思いますが」
「アキ、その辺にしておきなさい。ここにいないとわかった以上、これ以上の用はないわ」
「休憩中失礼しました」
「……まったく、なんなのあなたたち」
先生に言い返している途中でユーコ会長に止められた。
確かに、会長の言う通り、今はこんなところで言い訳している場合じゃない。
「間地君、もしカトリ先生を私が見つけたら話しておくから、ね?」
「あんまり慌てちゃだめよ? さもないと私のお世話になっちゃうから♪」
担任と保健室の先生の言葉を背に受けて職員室を後にした僕たちは、その痕もユーコ会長につき従って構内を一通り探索してみたけど、結局カトリ先生の行方はつかめないまま昼休みが終わった。
しかも、慌てて教室に戻ったせいで生徒会室の鍵を閉め忘れた上に、僕とリンネのお弁当も放置したままにしてしまい、五校時の終わりに学年主任の先生から大目玉を食らってしまった……………。
僕もリンネもちょっと泣きそうだった。
僕の家は第二生徒会室 南木 @sanbousoutyou-ju88
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の家は第二生徒会室の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます