埋蔵金の噂 8
17時を過ぎた頃、3日間出張に出かけて父さんが帰ってきた。
「うー、ただいまっと…………今日は風が強かったな……と、おっ、なんだ秋穂、今日も友達が来ているのか」
『おじゃましてまーす』
「おかえり父さん……友達というか、生徒会だけどね。今日はもう仕事終わったの?」
「商談が思ったよりスムーズにまとまったんだ」
僕の父さん――
身長は191cmと僕よりもさらに一回り高いけど、丸眼鏡にひょろなが体形のせいで、一昔前のオタクのようにも見える。
「お疲れ様です、秋穂さんのお父さん。お茶はいかがですか?」
「いただくよ。ところで今日は何の話をしてるんだい」
ササナ先輩からお茶を貰いながら、父さんはしれっと生徒会の話に混ざってきた。
生徒会メンバーたちも、父さんが話に入ってくることに何の違和感も覚えていないようだ。
なにしろ、初めて家に集まった日には父さんと母さんが家にいたから、メンバー全員もう顔を覚えてるし、ユーコ姉さんとリンネはそもそも昔この家で遊んでいたころからの顔なじみだから、話すのもすっかり慣れてるんだろな。
さて、父さんには生徒会のみんなと遊びに行く話はしているけど、宝探しのことまでは言わない方がいいかな? と、思っていた矢先に……
「週末に古墳公園へ宝探しに行くの。だから持ち物と集合時間を決めてたのよ」
「ほほう、宝探し! それは楽しそうだね!」
ユーコ姉さんは、宝探しのことをあっさりと父さんに話してしまった。
「あのー……ユーコ姉さん? 父さんは一応部外者だけど、話していいの?」
「アキのお父さんは身内みたいなものだからいいのよ」
「はっはっは! 秋穂たちが小学校の頃を思い出すなぁ! もしかしてあの時どっかで拾ってきた地図でも見つかったかい?」
「えっ!? なんでわかるの!?」
リンネが手に持っていた古地図を見せると、父さんは「ああ、これか」とつぶやきながらしげしげと眺め始めた。僕はこの地図がリンネたちに見つかるまで忘れてたんだけど、父さんは憶えていたようだった。
父さんは時々骨董品も扱うから、こーゆーものの真贋もわかるんだろうか?
「どう……? 本物っぽい? それとも偽物っぽい?」
「そうだねぇ、とりあえず印刷物じゃないことは確かだね。墨も紙も、それなりに昔のものだし、文字が全く書いてないからいつの時代かはっきりしないけど、少なくとも戦後すぐから、古くても明治初期といったところかな。ま、本物かの確証はできないが、完全な偽物ってわけでもなさそうだ。誰かに拾われてなければ、何か出てくるかもしれない」
「見ただけでそんなことまでわかるのか、スゲェな!」
「ははは、何せお父さんはお宝鑑定番組でも的中率8割を誇るからね」
地味に凄いんだけど、プロで残り2割を外すのはどうなの?
ともあれ、お父さんに鑑定してもらったことで、古地図自体の信憑性が俄かに高まってきた。少し前は「どうせ偽物だろう」と思っていた僕も、今日のお昼に聞いたうわさ話や、カトリ先生の話も合わさって、何か出てきそうな気分になりつつあった。
「ねぇ優古さん、もしよかったら秋穂さんのお父様もお母様も、それに萌さんもピクニックにお誘いしませんか?」
「ピクニックじゃなくて生徒会活動ね。でも確かに、それもいいかもしれないわね」
「あー、すまない。週末お父さんはお母さんと一日デートに行く予定なんだ。お宝については君たちの目で確かめてみてくれ」
「で……デート!?」
デートと聞いて、なぜかリンネが顔を真っ赤にした。
別にリンネがデートに行くわけじゃないのに、何を恥ずかしがってるんだろうか?
「おーいツキガセ、何顔を赤くしてやがんだ? まさかお前がオヤジさんとデートに行くんじゃないだろうな?」
「違いますって! あたしはアキホ以外とはデートなんてしないわっ!」
「僕としたこともないけどね」
「…………まあいいわ、何か見つけたらまた鑑定お願いするわね」
「ああ、出てきたものが武器以外だったらキチンと見てあげるよ。間違えて昔の軍需工場で作ってた武器や爆弾の残り物を掘り起こさないようにね! あっはっは!」
「父さん……その話はもういいよ……」
結局そのあとは、父さんも含めていつものように生徒会メンバーで雑談をして、ササナ先輩とアーモン先輩が帰った後も、リンネとユーコ姉さんが夕食を食べていく。
それにしても…………生徒会メンバーと話していると、友達が増えたというよりも、なんだか兄姉が増えたような気分になるのは、気のせいだろうか?
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