古びた鍵 3
色々あった生徒会活動という名の親睦ハイキングを終え、僕たち5人は行きとは違う道――――葦古野山の北の道を通って、姫木学園の裏口の方に続くルートを通って帰ってきた。
途中、ショッピングモールでユーコ姉さんから、約束通り本当に眼鏡を買ってもらったけど、完全な新品を作ると2週間かかるということもあって、レンズをそのまま新しいフレームに移す応急修理をすることになった。
ようやくクリアな視界が戻ってホッとしているけど、自分で選んでいないフレームの眼鏡というのもなんだか気恥ずかしい…………。
「本当はもうちょっといいものを選びたかったのだけど、今は何より眼鏡を直すことが先決…………これで妥協するわ。大体レンズの形からしてどうかと思うけど」
「結構ましになったじゃんアキホっ! 前のやぼったい雰囲気が少し消えたじゃないっ!」
「う~ん……自分だとちょっとよくわからないかも」
「あきれた。今度予備の眼鏡を新調するときは、絶対に私に言うこと。これは会長命令よ」
そんなに悪いかな……父さんそっくりの丸眼鏡、今まで使ってしっくり来てたのになぁ。
ま、どのみち僕は影が薄い人間だから、眼鏡の形を変えたくらいですぐに見抜く人なんて、いると思えな――――――
「あれ? 兄さんたち、こんな方に来てたの? っていうか兄さんちょっと雰囲気変わった?」
「え? モエ?」
「あらモエちゃんじゃない。部活帰りかしら」
なんと驚くことに、偶然部活帰りの妹とばったり出くわした。
ああ、そういえばこの辺りは姫木学園の中等部の敷地が近いんだっけ。
学年カラーの赤いラインが入った半袖体操着を着て、首にタオルをかけて、少し伸びた後ろ髪をポニーテールにくくっているところを見ると、ついさっきまで運動していて、そのまままっすぐ帰ってきたといったところか。
「おうアイチ妹、見ろよ、お前の兄貴眼鏡新調したんだぜ!」
「そうなんだ…………宝探し中にメガネ落として踏んづけて、ユーコ姉さんに新しいの買ってもらったの?」
「あらすごいですわ。そこまで正確にわかるなんて、妹さんは超能力者ですか?」
「だって、兄さんが自分でそんな眼鏡選ぶと思えないし、壊したか何かしたのかなって思っただけ。それに、直さなきゃならないくらい壊れたってことは、思い切り踏んづけたって考えるのがもっともらしいなって」
やるな、この妹…………僕と違って勘が鋭いじゃないか。将来は探偵にでもなればいいんじゃないかな。
「で、兄さんたち、結局埋蔵金発掘で何か見つかった?」
「そうそう! それなんだけど、実はこの――――うむほっ!?」
「こーら、こんな場所で軽々しく生徒会機密を話さないの。誰かの耳に入ったらどうするのよ」
リンネが鍵を見つけたことを話そうとしたら、ユーコ姉さんがすぐに口をふさいだ。
一瞬「先を越された」と思ったけど、勇み足にならなくてホッとしたよ。
それに、モエは二人のやり取りを見て一瞬で察したようだった。
「へぇ、そういうことね! いいな~、私も部活なんて行かないで、兄さん姉さんたちに付いていけばよかった。帰ったら私にも見せてよね!」
「たしか妹さんはテニス部に入ったのですよね」
「ううん、テニス部は三日前に辞めたわ。今日までバスケットボール部に入ってたけど、それもついさっきやめてきたわ」
「は? もう転部するの!? また何か気に入らないことでもあったの!?」
「……歓迎の練習試合で3年の先輩たち相手に連続シュート決めたら、ものの見事に嫌われちゃったわ。ボールにすら触れさせてもらえないんだもの、もう部活に行く意味ないじゃない?」
「なぁアイチ、お前の妹はスポーツ漫画の主人公か何かか?」
モエは相変わらずの一匹狼だ。
影が薄くて友達がなかなかできない僕と違って、モエはそれなりに可愛いし、明るくて活発だから、友達なんてすぐにできそうなのに、もったいない。
こうして帰り道に妹を加えて、陽が完全に落ち切った時間に帰宅。
いつもならササナ先輩とアーモン先輩は「自分たちの」家に帰る時間だけど、今日は秘密基地で見つけた鍵を父さんに見せて、その結果を聴いてから解散することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます