古びた鍵 2
鍵を発掘して、ササナ先輩が作ってくれたお弁当を堪能した僕たち5人は、もう一つの目標物の手がかりを求めて、古墳公園の敷地を散策することにした。
公園の中にある可能性は低いんじゃないかってことはみんな承知しているけど、とりあえず消去法で場所をしらみつぶしにしていくのが確実だし、なによりお昼を食べた後の腹ごなしには、暖かな陽気の中での散策が一番だ。
「小さい頃はこの遊歩道で、アキホとユーコ姉さん、それにモエちゃんで追いかけっこしてたわよねっ! 本当になつかしーなー!」
「今でも大人がランニングするにもピッタリな場所だし、走りたくなる気持ちもわかるぜ。んで、ツキガセが一番すばしっこくて、アイチはいつもビリッケツだったとか?」
「あはは、残念でした。むしろ僕は一緒だった4人の中で一番足が速かったんですよ」
「うっそだろお前!? そんなトロそうな見た目で足早かったとか詐欺だろ!?」
「嘘ではないわ。悔しいけど、足が一番遅かったのは私だったわ……。むかついたから3人でアキを長時間追い回してみたけど、ちっとも追いつけないんだもの」
「まあ、すごいですわね秋穂さん! 足の速い男の子は、女の子にモテるんですよ」
「いやぁモテるだなんて…………今はそこまでじゃないと思うし……」
そうそう、あの頃は逃げ足の速さだけは誰にも負けなかったな。
今はそこまで自信はないし、陸上やってる人に比べればまだまだだと思うけど、ササナ先輩から「モテる」なんて言われたら、お世辞でもうれしい!
ふふふ、なんだか少し照れちゃうな。
あれ? でも確か、何度か走り回っても、最終的にリンネやユーコ姉さんに捕まった記憶があるんだけど……?
「私はそうは思わないわね。いくら足が速くても、前をよく見ないでしょっちゅう縁石や地面のくぼみに躓いてずっこけてたんだもの。最終的にはリンネと一緒にとっ捕まえて、背中に乗って押さえつけてやったわ」
「そうそう、そういえばそうだったわ! あの頃からアキホはドジだったから!」
「アッハッハッハッハ! そいつは傑作だなぁオイ! 女に追われるなんて、やっぱモテたじゃねぇか!」
「うぬぬ……せっかくかっこいい思い出だと思ったのに……」
「まあまあ、そんなところも可愛らしいではありませんか」
……しょんぼり。
カッコつけても、結局サマにならないのも、昔から変わらないのか。
ササナ先輩は優しくフォローしてくれるけど、可愛いってそれ褒められてるのか微妙だよ…………
「そうそう、転ぶ……で思い出したんだけどっ! 結局あの秘密基地の奥にあった空間って、結局何だったのかしら? それに、この缶も何のために作られたのかなぁ」
「誰のせいで転んだと思ってるのリンネ…………でも確かに、目的がよくわからないよね。鍵があそこに隠してあったということは、埋蔵金と何か関係あるのかな?」
「私は実際に見ていないから何とも言えないけど、話を聞いている限り、現代的でもなければ大昔的なものでもなかったんでしょう? やっぱり軍隊関係の何かなのかしらね?」
僕たちは、もう一度あの秘密基地の奥にあった空間のことについて話し合い始めた。
先日カトリ先生が話していた、姫木学園の周囲が旧日本軍の施設があったこと、それに戦前にあの山の考古学調査が行われたらしいということ。
もし、これらが秘密基地と何か関係があるのだとすると、埋蔵金と思わしきものは、それなりに物騒なものが埋まっているんじゃないかと思えてくる。
というか、僕が古い鍵を見つけたときから抱いてる不安は、まさしくその点にあるんだ。
「とはいえ、鍵まで見つけた以上、実物を見るまで引くわけにはいかないわ。それに、危険なものが身近に埋まっているのだとしたら、逆に見過ごすわけにはいかないじゃない?」
「ま、最悪爆弾みたいな危ないものじゃなけりゃぁ問題ねぇよ! 埋蔵金は逃げないでどっかに埋まってるんだろうし、焦らずにじっくり探ろうぜ」
「いいえ、あまりそうは言ってられないかもしれないわ」
「へ? なんで?」
アーモン先輩の言う通り、生徒会の権威がかかっているとはいえ、そこまで急いで発掘する理由もないと思うんだけど、どうもユーコ姉さんは違うらしい。
「もしかしてユーコ姉さん、あたしたち以外の誰かに先に掘り出されるかもしれないってこと? でも、鍵を持ってるのはあたしたちだけだし、その心配はないんじゃない?」
「私が気にするのは、横取りされる心配じゃないわ。それこそ、アキがへまして鍵を誰かに取られでもしない限りね」
だからなんで僕を引き合いに出すの…………
この鍵を一目見て盗もうなんて考える人がいるとは思えないよ。
「それよりも、来月末に開かれる1学期生徒総会…………できればこの日までに、生徒会の権限を取り戻したいのよ。さもないと、せっかく取り戻した権限も、使い道が大きく限られてしまうわ。それに、私はもう、教師たちが用意した原稿を読むだけの生徒総会なんて御免だわ」
「ユーコ姉さん…………」
「そこまで考えてたなんてっ!」
ユーコ姉さんの表情は、愁いを帯びつつも力強かった。
僕とリンネは、生徒会長として生徒会を思うユーコ姉さんの気持に、思わず感動して、両こぶしをぐっと握った。
実質のタイムリミットは約一か月後……それまでに埋蔵金の目星をつけなければならない。
僕たちは気合を入れなおして、公園内の敷地をあちらこちら見て回るも、結局分かったことは「少なくとも公園内には手掛かりはない」ということだけだった。
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