秘密基地 3
ボロボロ崩れ落ちる土壁、突き刺すたびにバリバリと裂ける木の板。
生徒会メンバーたちが無言で見守る中、僕も黙々とスコップを振るって、隠されたものの全貌を暴こうとする。
スコップで掘ること5分くらい…………かつて僕が石で削って落書きをした壁はすべて崩れ落ち、中からは人一人が入ることができそうなトンネルと、その入り口に打ち付けられた数枚の板が現れた。
「こんなの嘘でしょう…………なぜなんですか」
僕は思わず、墜落寸前になっても自分の操縦ミスに気付かないパイロットみたいな言葉を口に出した。
だってまさか本当に何かあるなんて思わなかったし、僕をけしかけた張本人――アーモン先輩も、開いた口が塞がらないようだった。
「…………よくやったわね、お手柄よアキ」
「と、とりあえず、そこの木の板も外しちゃおっ! あたしも手伝うからっ!」
リンネも加わって、スコップで入り口を塞ぐ木の板をメリメリとはがしていく。
板はそれなりに分厚いものだったけど、長い間土に埋まっていたせいか激しく腐食していて、力を入れなくても簡単にバラバラになっていった。
障害物を取り除いた入り口から中を覗いてみると、明らかに人の手で掘り進められたトンネルがずっと奥まで続いているようだった。
リンネが手持ちの方手持ち懐中電灯で照らしても、奥の方は何も見えなかった。
「ははっ……なんだか本格的に秘密基地じみてきたじゃないか」
「どこまで続いているのでしょうか? 罠はなさそうですか?」
「中に入ってみないとわからないわね。といっても、もしものことがあったときに備えて、中に入る組とここで待機する組に分けた方がいいわ」
ササナ先輩が言うような罠はない……と思いたいけど、どんな危険が潜んでいるかわからないのは事実。
全員で進んでもし何かあってみんな巻き添えになったら、もう助からないからね。
「ということで、見てきなさいアキ」
「あ、やっぱ僕なんだね」
行くのはやぶさかじゃないけど、そのセリフは主に僕の死亡フラグになるからやめてほしい。
僕は覚悟を決めて、懐中電灯片手に通路を進もうとした――――が、その前にアーモン先輩が立って、手で僕の動きを制した。
「いいや、ここは俺に任せろ。こんなワクワクすること、滅多にあるもんじゃねぇからな!」
「い、いいんですか先輩? 危ない罠とかがあって怪我するかもしれませんよ!」
「でやんでぃっ! それならなおさらアイチのほうが危ねぇだろが! 黙って俺についてこい!」
おおっ、流石は生徒会一の怖いもの知らず先輩!
小さい背中が3倍くらい大きく見えると錯覚するくらい頼もしいぞ!
「あ、あたしも行くっ! あたしも中に何があるか気になるわっ!」
「では私と優古さんでここを見張っていますね」
「何かあったら携帯鳴らしなさい。骨は拾ってあげるわ」
「姉さん……この中たぶん圏外だから携帯通じないよ」
「じゃあ骨は諦めるわ」
それに比べてユーコ姉さんはいちいちひどいな…………これじゃあうかうか全滅もできないじゃないか。何としてでも生きて帰らないと……!
僕はそう意気込みながら、アーモン先輩の後に続いて隠された通路の中へと進んでいった。
「アイチ、ツキガセ! 3メートル間隔で付いてこい! 近づきすぎるなよ!」
すぐ前から、アーモン先輩の声が反射しながら響いてくる。
「アーモン先輩、3メートルとか言われても、暗くて距離感分からないんですが」
「気合で何とかしろ。懐中電灯で俺のケツを同じ距離で照らしてりゃわかるだろ」
この通路、高さが僕の身長より低くて、少しかがみながら進まざるをえない上に、横幅も人一人がやっと通れる程度しかなくて、すごく窮屈だった。
アーモン先輩は本当に何も怖くないみたいで、僕が苦戦している間にもどんどん先に進んでいってしまう。
「アーモン先輩っ! 行き止まりとか分かれ道とか、なさそうですか?」
「今のところ何も見えん…………クソッタレ、いったいどこまで続いてやがんだ?」
入り口からずっと懐中電灯で照らしていたアーモン先輩の後頭部(さすがにお尻は失礼かなと思って)がどんどん遠ざかっていって、ほとんど見えなくなってきているにもかかわらず、通路は終わる気配が見えない。
体感的には100メートル以上進んだように思えるけど、正確なところは全く分からず、今更ながら徐々に恐怖がわいてきた。
(そういえば……何かのゲームで、明かりが消えたまま長い通路を進まなきゃならないっていうのがあったっけ。迷って止まっていると、何かに襲われるっていう……)
そしてこのままずっと進んで、二度と戻れなくなったら――――そう思うと、急にゾクッと鳥肌が立った。
ちくしょう、変なこと考えるんじゃなった。
(そういえば後ろからリンネの足音が聞こえないような?)
けれども僕は気付いてしまった。
さっきまでかなり後ろで聞こえてきたはずの音が聞こえなくなっていることに……
まさかリンネの身に何か!?
僕は慌ててその場で立ち止まると
「きゃぁっ!?」
「おふっ!?」
背中に何かが衝突してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます