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いつものように、ぐるぐると泳ぐ。
水を叩いて、ぐんと前に進む。少し体を傾けてぐぐっと旋回して、水面へと鼻を出して、再び潜水する。
自由に泳いでいると、リンリンといつものベルの音が聞こえた。今日はあるのか、と思いながら海の国の港に顔を出すことにする。
いくつかある桟橋が見渡せる場所で再び耳を澄ます。リンリンと再びこちらを呼ぶ音がして、そちらへの桟橋へと尾をしならせる。
リンリンとうるさい桟橋の近くの海面を口先で突き破ると、眩しくじりじりとした日差しが皮膚に突き刺さる。
「今の時間は、こんにちは?」
そこに立っているのは、汗まみれの、大きい体の人間のおじさん。おうこんにちは、にかっと見せてくれる歯と笑顔が眩しい。
初めは怖かったのは内緒だ。
「もうすぐ、あっちの方の海岸に、人間の子供を一人連れた団体が来るんだってよ」
近くに置いてある大きな木箱をポンポンと叩く。
「子供以外の人数は不明だが、依頼人は、二足の狐のにいちゃんだ。見える位置にいる、とは言ってたけどよ」
子供一人の団体様、二足歩行の狐頭が届け先と…狐ってどんな頭してるんだろう
「んじゃ、こいつ頼むわ。外身はバラして海に流すように言っとけよ? こっちに持って来られて手間を増やしたくないんでな」
うん、と答えると、男は箱を押して桟橋から落とす。パッシャンと水しぶきが上がるとぷかぷかし始める。
男が首にかけていた手ぬぐいで汗を拭いている間に、箱についている輪っか状の紐に手を引っ掛けた。緩みがないことを確認してから、また泳ぎ始める。すると重い感触が全身を襲うが、まだまだ軽いほうだ。
さて、配達先はどこだろう。時折荷物を置いて、浜を見ないといけない。
なにあれ、とテルが立ち上がった。勢い余って顎にぶつかってくるが、痛くはない。
「海に住んどる魚の一種やろ。にしては、でかいなぁ」
この子より二倍はあるだろう、半身を浜辺に乗り上げた生物は、テラーと何やら話している。テラーが硬貨の入った袋を渡してやれば、意気揚々とその生物は海へと帰っていった。
残されたのは、箱だ。
「どこの海にでもいるやつじゃないな、あれは。海の国の住民と考えるのが普通かもな」
ギルが立ち上がり、一人で箱を押しているテラーのもとへと向かう。
「海の国には、市場とはちょっと違うやつがおるんやね」
独り言。
テルが再び走り始めて、微力ながら二人を手伝い始めた。微笑ましい限りだ。
◆◆◆◆
海獣を登場させるなら今しかない。そう私は考えた。
だが彼らには名前はない。
イメージはシャチなりイルカなりなんですが、紐とかでものを引くって、結構危険ですよね…考えられる他の方法は押すくらいですが、波に揺れるために難しそうだと思いました。なんかありますかねぇ。
また、荷物を海に流す、とありますが、中身は木のみとかそういうのですし、木片も流して分解させればいいし、そもそも滅多に荷物の箱はないし…ということで海に流すことにしました。
ゴミの処分方法を考えるのもなかなか難しいですね…
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