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そろそろ休むか。母になんとなく似ている竜のおじさんがそう言うと、人間のお兄さん二人が頷く。
まだ泳げるよ、と言ってみるものの、駄目だ、とすぐに返すおじさんは、尻尾を背中に回してきて、海とは反対方向へと押してくる。
「どんな遊びでも休憩が必要だ。疲れていても泳ぐのは、命の危険があるときだけでいい」
母にも同じようなことをされたことがあったが、思ったよりも太く、強く押されたために軽くつんのめってしまう。けれどおじさんは何を言うでもなくあるき始めていた。
いつの間にか作られていた岩の屋根の下で、母、兄、おじさんとお兄さん二人で、輪になって座った。すると濡れた身体に砂がひっつきて、ちくちくとする。
「おい、テレア。飯をよこせ。腹が減った」
どうしたら楽だろうか。母と兄とおじさんは太ももを砂につけて平気そうにしている。我慢しているのかも。
「うん? あたしゃなんも持っとらんよ。テラーにあんたらの食いもんは任せてる」
一方でお兄さん二人は膝を立てて、足の裏とお尻だけを砂につけている。たしかにあまり痛くない。
「じきに、海上輸送で届くのでお待ちください。海の国の特産品です」
けどお尻がじゃりじゃりする。足の裏は気にならないけれど、じゃりじゃりするのは嫌である。
「海の国ってと、魚か? 俺は肉がいいなぁ」
どうにも納得がいかなくて、結局立ち上がり、母の脚に座らせてくれるように頼んだ。うん、と答えて、座れるスペースを作ってくれた。
「海の国は、復興途中とはいえ、海産物以外によそから珍しいものもやり取りしているらしいです。そのあたりもあればいいですがね」
そこに座ると、ゴツゴツとしたいつもの感触が身体を包んでくれる。
「海の国の特産品なら、交易品は入らないのでは?」
小さい方のお兄さんの言葉に、大きいお兄さんの顔が伏せられる。どうしたのだろう。
「テルは、好き嫌いしたらあかんで? お兄さんみたいになってしまうからな?」
頭上からの声に、どういうことだろうと思いながら海の方を見やった。
先ほどと変わらない海に、ぷかぷかと何かか浮かんでいた。あれはなに、と指さしてみれば、既にそこには兄がいて、足を濡らしながら何かをしていた。
◆◆◆◆
慣れない感覚を避けるために、子供なりの知恵を働かせる。歳相応の知恵で動いてもらうってのはなかなか難しい。
海に行った覚えが一回しかないんですよね。ゲーム大好きっ子でしたから。夏に旅行したのもいつが最後か。
青年たちが悩み挑む姿もいいですが、少年のささやかな一大事を描くのも楽しいものですね。
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