さまーいべんと(私歩より)

1

透き通っているかのように見える白い空。高くに見える真白な雲。水平線の彼方には、何が見えるでもないが、夏である、と思わせるだけの雰囲気があった。

じりじりと照りつける日差し、傘で防ごうにも無駄だといわんばかりに、砂が熱い光を照り返す。

ザザン、ザザン、と一定のリズムで繰り返される、どこからかやってくる白波。今日は比較的波が高いという話だ。

海。

世界樹から荒れ地を通り抜け、二日ほど歩いたところにある、海。この近くには、かつて一つの国があったが、今や集落のような規模の者たちしかいない。なんでも国の再建を目指しているらしいが、上手く行っていないらしい。

暑い。誰もが口にしたいだろう言葉を呟いたのは紅竜だ。

「なんだってこんな場所に来るわけ? 家のほうが涼しいのに」

見るからにけだるそうな彼女は隣にいる、身体から破片を落とすドラゴンに問う。

「暑いからゆうて、引きこもるんは老人の仕事や。たまには変わったところで遊びぃ」

立脚類の姿のテレアは同行人たちをぐるりと見渡す。

テラー、テル。紅竜のラクリ、青竜のリエード、土竜のギルに、騎士のインスに、デイル。さらに、獣のタマモに、クトゥール。

「テル、おじちゃんおばちゃんたちが遊んでくれるから、いってき?」

にこりと笑いかける彼女に、多くの視線が突き刺さる。


夏というのは季節のことではない。この地域に見られる気候のことだ。


◆◆◆◆


補足・クトゥールは、デイルの慕っている立脚類のずんぐり獣。


全国梅雨明け間近ですね。すなわち、夏です。というわけで、市場の彼らが海水浴に来たら? というテーマでしばらく書いていきます。

さて、市場は年中安定した気候であることを考えると、春夏秋冬は気候を示すことになると思うんですよね。まぁ、それこそ〇〇気候なんていう名称があるわけですし、ね?

ファンタジーでも夏という時期があるものとされていますが、実際のところ、季節がそれだけある地域ってあまり多くはないんですよね。

つまり、星が丸く、太陽が存在すると仮定したとき、ファンタジー世界は一定の緯度に存在が集中している…?

これはこれで考察が楽しそうですね。


では、しばらく妄想にお付き合いくださいませ。

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