10
目を焼くような日差しが衰え、空に鮮やかな緋を与えるも、点々とする光を散りばめた深い青に侵食されている。
まだ熱の残る砂に足をつけ、ようやく山飛竜と紅竜は立ち上がって、他の皆のもとへと向かった。
「ラクリぃ、なんでみんな、平気なんだろうねぇ」
先行している彼女の揺れる尻尾を目で追いながらシェーシャは気だるそうに尋ねる。
「知らないわよ。リエードのやつもどっかに行ってたあたり、男ってのはそんなもんなのかしらね」
普段よりもワントーンほど低い声は、半分閉じている目もあり虫の居所が悪そうである。
「テレアと、テラーは?」
だがそんなことは背面からは分からない。彼女のなんてことのない質問。
「あいつら男なの? 女でもないと思ってるけど」
彼らのいる傘まで、あと半分だ。
少し前に彼女たち二人を除く全員で火を囲んで食事をしていたようだが、今はギルとタマモ、インス、テルが波打ち際にいて、他は傘の下で夕陽を眺めているようだ。
「帰りもぐるぐるーってくるのかな」
はてな。
「あぁ、たしかに」
納得。
二人の到着に気づいて、岩の傘をさらに広げたテレアは、そこに座り、と日向だった砂地を示す。
ラクリは端にいたテラーの隣に、シェーシャはさらにその隣に腰を落ち着ける。
「暑さに溶けとらんか、二人とも。あと、腹、へっとるんとちゃう」
テラー越しに見を軽く乗り出す彼女に、いらない、と手と首を振る二人。
「こんな暑さじゃ、喉通んないから。帰ったら食べるわ」
返事を聞いて、テレアは持っていた魚の丸焼きを味わうことなく一呑みした。あんたもいるか、と取り出したもう一尾をテラーに渡すと、彼はバリバリと頭からかじって平らげてしまう。
「暑いねぇ。ギルたちはどうなんだろ」
リエードのぼやき。
「兄さんは暑そうですね。汗が流れてます」
インスの分析。
「もう少ししたら、帰ろか。明日は訓練の日やし、な」
ドラゴンの呟き。
あたりが暗くなる頃に、彼らは、来たときと同様にして帰っていくのだった。
◆◆◆◆
パート10まで続けてましたが、10時から20時くらいまでのお話でした。回想も混ざってますけどね。
特に目立った事件もなく穏やかな出来事を、パートを跨いだ交流を混ぜながら描くのもいいものです。
ひとまず、「さまーいべんと」はこれにて終了です。
次はまたつれづれと書いていきますよぉ。
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