第19話 クラッシュオーバー
チャラチャラン
二人の想いが交わった七夕から一夜が明けるとスマホが鳴り響いた……どうやら晴希からのLINKの様だ。
夏稀に見つかると消されてしまうのでお互い偽名を使ってLINK。これによりある程度連絡も自由に取る事が出来る様になった二人。
(晴希はハルハレ、直樹はソーゲンで偽名を使っている模様)
晴希からのモーニングコールを早速確認するとそこには……
ハルハレ【おはようございます】
【少しまずい事になっちゃった】
ソーゲン【何かあったの?】
話を伺うと晴希がバイトを休んだ事を不信に思ったナツが探し回ってたらしい。スマホに何度も着信があり、かなり怒ってる様であった。
ソーゲン【今日、バイト重なってるし】
【確かにまずいな】
駆け落ちした事がバレればきっと直樹は壊されてしまう。けれど不思議と恐怖を感じていなかった……だって夏稀と和解する為には避けては通れない道なのだから。
バイトの時間になると不安そうな目で見つめてくる晴希。直樹は大丈夫大丈夫とアピールしているが内心は不安でどうにかなってしまいそうであった。
バイトを終えるとやはり駐車場には夏稀が待ち構えている。そんな夏稀に対して晴希が一人出てゆくのだったが……
「おいハル。昨日はバイト休んでどこに行ってたんだ」
「いや具合が悪くなっちゃって家で寝てただけだよ。あははは」
「家にいなかったのにか?どうせあの木偶の坊と駆け落ちでもしてたんだろ?おい、さっさと出てこいよ。女に任せて自分はノコノコと隠れてるつもりか」
適当な言い訳でやり過ごそうとしていた晴希だったが、夏稀は嘘を見破ると怒りの矛先は直樹へと向いた。
晴希には説得出来るまで出てこない様に言われていた直樹だったが、夏稀の言葉に火がついたのかお店の中から出てきてしまった。
「だっ駄目だよ直樹さん……まだ出てきちゃ」
「漸くお出ましか。テメェは昨日、晴希と一緒にいたんだよな?あぁん」
「ああ……僕が晴希に会いたくて誘ったんだよ。君達が邪魔ばかりするから」
本当は晴希の方から誘われたのだったが、直樹は嘘をついた……怒りの矛先を自分だけに向けるように。そして思惑通り夏稀の怒りは直樹にだけ注がれるのであった。
「一度無いし二度までもハルに手を出しやがって……テメェはただじゃおかねぇからな」
「いい加減にしてくれよ。僕達は真剣なんだ。もう邪魔しないでくれないか?」
【
真夏の熱帯夜に晴希への想いを乗せてぶつかり合う二人の想い。ヒートアップしていく二人を止める事は最早、神様でも不可能なのかも知れない。
「もう止めてよナツ。直樹さんもこれ以上煽っちゃダメ」
仲裁に入る晴希には耳も止めず、どんどんエスカレートしていく二人。夏稀が直樹の胸ぐらを掴み鋭く睨み付けるが、全く動じない直樹。
一度は病院送りにさせられた相手……本来であれば震えて逃げ出したい状況だっただろう。しかし、今日の直樹は違った……覚悟を決めた男はこんなにも強くなれるのである。
「晴希の事を何も知ねぇ癖によくも抜け抜けとそんな事を……テメェだけは許さねぇ。一生地獄を見せてやるからな」
「何をされようと僕達の思いは変わらない。晴希と僕は結ばれる運命にあるんだから……」
「なっ……直樹さん……」
直樹の言葉に心を打たれた晴希は顔を真っ赤にしてそのまま俯くと人差し指同士を合わせながら照れていた。そんな直樹の熱意を受け取ってか少しだけ怯んでいる様子の夏稀は……
「チッ……もう勝手しろよ。ただこのまま幸せになれると思うなよ……絶対に許さないからな」
そのまま走り去って行ってしまう夏稀。宣戦布告ではあったが良く考えるととんでもない奴を敵に回してしまったのかも知れない。そんな直樹を心配そうな目で見つめてくる晴希は涙ぐんでいた。
「ははは……約束破ってごめん。年甲斐もなくつい熱くなっちゃったな。大丈夫、何があってもこの想いは変わらないから……」
「直樹さんありがとう。あんな風に言って貰えて私、凄く嬉しかった。だけど不安で……もし直樹さんの身に何かあったらって思うと……えっ?」
気が付くと今度は直樹は晴希を抱き締めていた。本当は震え上がる程に恐かった……でも晴希への想いがその恐怖にすら打ち勝ったのだ。
押さえ切れない程の感情……晴希への愛は何よりも強く直樹を突き動かしてゆくのであった。
この日から夏稀が迎えに来る事は無くなり、舎弟達も監視も無くなった。そのあまりの静けさは不気味であり……まるで嵐の前触れを彷彿とさせるのであった。
そして数日後。晴希の夏休みが差し迫ったある日……再び事件が起こる。事務所で
「直樹君にちょっとお願いがあるんだけどさ」
「あっ大丈夫ですよ。何かあるんですか?」
「いや実はね、今日からまた新しいバイトの子が来るんだけど教育係をお願い出来ないかななんて?なんか直樹君に教わりたいって言って来てるんだけど」
「えっ?僕ですか?まあ全然構わないですけど」
違和感はあった物の軽く引き受けてしまう直樹。これが悪魔の落とし穴であった事にも気づかずに……
夕方の引き継ぎを終えてテンダイと共に入って来たアルバイトの新人。その姿を見て直樹は目を丸くし、後退りしながら驚いていた。
「今日から一緒に働いてもらう
「くくくっ……宜しくな。
まさか夏稀がアルバイトで入ってくるなんて……波瀾の展開に唖然とする直樹。その只ならぬ雰囲気に不安と恐怖を感じずにはいられなかった。
私の処女を奪って下さい ~僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い~ 春原☆アオイ @haruharaharuki
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