私の処女を奪って下さい  ~僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い~

春原☆アオイ

プロローグ 〜 独唱 春風は突然に 〜

 残春ざんしゅん……花弁はなびら散る頃に

 透き通る風がほほかすめると


 かすかに鼻をくすぐ

 雨の匂い


 しとしととこぼれる

 宵時雨よいしぐれの中で……


 

 ――――僕達は出会った。




三十路アラサーフリーター』と『女子高生』

 世間から見ればあまりにも不釣合な二人


 結ばれる事など絶対にあり得ないと

 初めから決めつけていた僕は

 好意を抱かれながらも


 その気持ちを受け入れる事が出来ずに

 彼女を遠ざけてしまった。




 ―運命―


 僕の気持ちとは裏腹に

 いくつもの偶然が重なった。


 離れても引かれ合うさま

 まるで赤き糸……

 強い運命で結ばれていた僕達は

 いつしか……愛をつむいでいた。




 ―満たされる日々―


 春に日溜ひだまる

 あの花の様に可憐かれん

 太陽の様に眩しい笑顔に照され

 

 くすんで見る影も無かった僕の心は

 色鮮やかに映し出されていた。


 温かな木漏れ日によって

 優しく包まれた僕の掌は

 無償の愛で満たされていた。



 そして……


 僕は誓うのだった……

 誰よりも彼女を幸せにするのだと……



 僕は願うのだった……

 この幸せが永久とわに続く様にと……







 だけど……この幸せは……

 ――――突如として終わりを迎える事となった。







 『私の処女を奪って下さい』


 彼女の言ったこの言葉だけが

 いつまでも僕の心の中で

 繰り返されている。


 これは僕と晴希の出会いと愛の結び

 そして……別れをつづった悲しき物語である。

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