第十三話◇刀の達人とは?
達人と呼ばれた剣術家は多い。
(* ̄∇ ̄)「誰が一番強いの?」
そういうのは解らないし、個人の好みというのもある。有名な剣豪の出る物語や映画といった作品に触れ、イメージが膨らんだりするものだろう。
例えば新撰組の沖田総司といえば?
(* ̄∇ ̄)ノ「病弱ゴホゴホな薄幸の天才美剣士ー」
と、いうのが新撰組を扱う作品の沖田総司のイメージなわけだ。しかし、現存する写真を見てみると……
( ̄▽ ̄;)「美青年? うーん……」
ダウ〇〇ウンのハ〇ちゃんに似てるような。
イケメンということなら同じ新撰組だと、土方歳三。こちらも写真が残っている。
(* ̄∇ ̄)「あ、うん、土方歳三カッコいい」
土方歳三は格好よく女性からモテモテだったらしい。そして芸者からもらった恋文を綴って、『俺、こんなにラブレターもらってるんだ。いやあ、モテる男は辛いねえ』と、見せびらかして自慢していたという。
( ̄▽ ̄;)「……うん、イケメン新撰組を攻略する乙女ゲームのファンには、聞かせない方がいいか」
これは一例だが、剣豪小説などから作られたイメージと、残された逸話や写真が矛盾したりする。そしてイメージで誰が一番強いのか、を言い出すと個人の思い入れのぶつけ合いで、結論は出ない。
新撰組は吸血鬼だっていう人もいるわけだし。沖田総司はアンデッドサイボーグだっていう人もいるわけだ。
(* ̄∇ ̄)「織田信長は、巨大化したり、空を飛んだり、目からビームを出したり、女の子になったり、寺を焼き討ちしたりする」
剣豪、剣術家のイメージ像よりも、語られる達人技のエピソード紹介といこう。
今回は、すごいぞ日本刀、でいこう。
榊原健吉の兜割り。
最後の剣客と呼ばれた男。
侍の消えいく時代、廃刀令が出れば、剣の代わりに杖を腰に差し、髷を落とし総髪が増える世の中で、死ぬまで頭に髷を残した。
窮乏する道場の資金稼ぎとして、撃剣会を起こし、撃剣興行を始め。
維新後、衰退した剣術の再興と普及に取り組み、しかし、剣術を見世物にしたこと、真似事の偽物が現れたことに悩まされたという。
明治生まれが成人になる時代、時代に取り残された頑固爺と呼ばれても、頑なに侍であり続けた男。
この榊原健吉の名を知らしめたのが、天覧兜割り。
(* ̄∇ ̄)「現代で言うと、ヘルメット割り」
現代のヘルメットと兜を一緒にするなよ。
時は明治二十年十一月、伏見宮邸で行われた明治天皇の行幸のもとの剣技披露の席にて。
用意された兜は名珍作の南蛮鉄の兜。
(* ̄∇ ̄)「おー、カブト。名珍? 南蛮鉄?」
兜は刀から頭を守る防具。となれば簡単に刀で割られる兜なんて役に立たない。
兜割りは剣士の技術も必要だが、これは刀制作者と甲冑制作者のバトルとも言えるか。
名珍家は平安時代から続く甲冑制作の名門家。南蛮鉄は南蛮から輸入していた鉄。
これで簡単に刀で割られる兜を明治天皇の前に出しては、名門名珍家の名が廃る。
一人目、鏡心明智流桃井道場門下の名人であり、警視庁の撃剣師範を務めていた逸見宗助が挑み、失敗。
二人目、逸見と同じ桃井道場門下であり、その兄弟子にあたる上田馬之助が挑み、失敗。
三人目、榊原健吉、挑戦。
気合い一閃、兜に三寸五分切り込み、見事兜割りを成功させた。
この天覧兜割りで榊原健吉は有名となり、このとき使用した刀、同田貫も名刀と名を上げた。
(* ̄∇ ̄)「鉄のカブト、斬れるんだ、スゲエ」
続いては林子平の洋刀七本斬り。
林子平といえば、『三国通覧図説』『海国兵談』そして、「隅田川の水はテムズ川に水路で繋がる」という名言がある。
( ̄▽ ̄;)「なに言ってんの? リンコピラは」
リンコピラじゃ無くて、はやししへい。
この林子平が長崎の出島でオランダ商館に招かれた。
長崎の出島で唐人が館に立て籠り事件を起こしたとき、長崎奉行所がこの館に殴り込み。そこに林子平が参加していた。
このときの林子平の暴れっぷりが噂となり、オランダ商館長は噂の人物に会いたいと、林子平を商館に招いた。
オランダ商館長は林子平に言う。
「唐人相手に大太刀廻りと聞いているが、分厚い青竜刀を真っ二つにしたとか、閉じた門の間に刀を通して、その向こうの閂を斬った、なんていうのは大げさになった噂話では?」
「では、やってみましょうか」
と、商館にある洋刀、レイピアかサーベルと思われる西洋剣を七本一纏めにして、林子平はこの洋刀七本を刀一閃で全部真っ二つにしたという。
(* ̄∇ ̄)「斬れるの? 日本刀でサーベルが?」
斬れちゃったらしい。そして日本刀スゴイ、欲しい、とオランダ人に人気が出たという。
(* ̄∇ ̄)「でも、日本刀でも二、三人と斬ると血油で斬れなくなるとか、骨に当たると刃こぼれして使えなくなるって」
そういうことを言う人もいるが、刃物がちょっと斬っただけで斬れなくなるなら、肉屋さんは一日の仕事をするのに何十本、包丁を用意しないといけないのか?
もちろん、名刀からナマクラ刀まで一緒に論じてはいけないが。
刀で斬るということであれば、駒川改心流剣術宗家、黒田鉄山。
剣道で使われる竹刀は使い込むとササクレができる。そのままでは危ないので、ササクレの酷い竹刀はその竹を交換する。
『固定した青竹を斬るよりは、竹刀の竹を摺り上げておいて斬る方がよほど難しいものだ』
と、祖父より聞いた黒田鉄山は、竹刀の竹を取っておいて試し斬りをやってみた。竹を摺り上げて落ちてくるところを一閃、スパッと斬れた。
(* ̄∇ ̄)「斬ったの竹でしょ? カブトとサーベルと比べると、派手さが無いなー」
このとき使った刀が、戦前の粗製乱造品。刃は止まり刀を自分の頬に当ててゴシゴシやってもまるで切れない、刃の無い刀だったという。
(* ̄∇ ̄)「え? どういうこと? 刃が無いの?」
黒田鉄山いわく、『刀というものは、とりあえず刀のような格好さえしていれば、とにかく斬れるものだ』とのこと。刀の形をしていれば斬れるものらしい。
( ̄▽ ̄;)「いや、そんなメチャクチャな。薄い鉄の棒が刀の形してたら、刃がついて無くても斬れるって?」
黒田鉄山は練習中に木刀で木刀を斬ってしまったことがある、と、著作で書いている。弘法、筆を選ばず、というものだろうか。
( ̄▽ ̄;)「なんで木で木が斬れるのか?」
もちろん、ちゃんと刃がついた刀だと、もっと簡単に斬れるという。だが、刃筋正しく鋭く振れるならば、木刀でも斬れてしまうようだ。
おまけ
木刀は流派により形が変わる。
個人的には、二天一流の木刀が刀に似ておりオススメだ。
また、樋入りの木刀。木刀の側面に溝の入ったものは、真っ直ぐ鋭く振るとヒュッと高い風切り音が鳴るところが面白い。
一人で素振りするときにはこういうのがあるといい。
剣道も素振りくらいは竹刀で無く、せめて木刀で行えば良さそうなのだが。
(* ̄∇ ̄)「模造刀は使わないの?」
模造刀は使ってはダメ。飾ることを目的にした観賞用の模造刀だと、振り回すと刀身が柄から抜けてすっ飛んでいく危険がある。
振り回す用に作られた居合刀、居合練習刀、がオススメ。ただ、けっこう値段が高い。
ジュラルミンの舞踊刀は居合刀より軽くなるが、振り回しても大丈夫。そして居合刀よりは安い。ただし、振り回す前に目釘が折れてないか、ぐらついてないか確認しよう。
( ̄▽ ̄;)「いや、木刀とか舞踊刀とか、持ってる人は少数派」
毎日の素振りで肩こりが緩和するのに……
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