第十話◇消える剣術、復活する古武術
(* ̄∇ ̄)「でも剣術が消えていくのは仕方無いんじゃない?」
なんだと小僧?
(* ̄∇ ̄)「武家社会も無くなって、剣で身を立てる時代じゃ無いし。現代じゃ刀を持ち歩く人もいないし」
確かに、どれだけ剣術を身につけても、相手が機関銃に手榴弾じゃ勝てない時代、戦場では使われないと、言ってしまえばそれまでなんだが。
(* ̄∇ ̄)「刀で実戦なんて時代じゃ無いでしょ。現代格闘技でも古流は実戦的じゃ無いって言われたりするし」
まぁ、古流じゃ無いけれど、実戦的に刀を教えてるとこも、あるにはあったりするけれど。
アメリカのイアイドージョーで、そこのセンセーは日本人じゃ無いけれど、イアイをドージョーで生徒に教えている。
このセンセーが『スラムで人を斬った』と言ってたり。血錆の浮いた刀を飾ってたりとか、あったものだけど。
( ̄▽ ̄;)「お、おおう、超実戦的なのが出てきた」
肩凝りを楽にするとか、腰痛緩和の為の体操とか、たまにテレビでやってたりするんだが。
その中で、背中の筋肉から腕の動きを連動させて、肩の負担を減らすとか。腰痛の原因になる反り腰を直す体操とか、足を股関節から動かして膝と腰に負担をかけない動作に変える方法とか、紹介されたりする。
こういうのを見たときに、それ剣術の中でやってる、というのがあるんだ。
(* ̄∇ ̄)「腰痛緩和って、いきなり身近な感じ?」
例えば柳生の流派の剣の素振りは、輪の太刀と呼ばれたりするもので、刀を上げ下げする動作の中で、両肘伸展。つまり、肘を伸ばしたまま曲げずに行う。
これは肘を使わぬようにして、刀を振る腕を胸の筋肉や背中の肩甲骨周りの筋肉から動かす練習法だ。
腕を、後ろは肩甲骨から、前は鎖骨から使う動作を学ぶ為の素振り。
剣術の形でも、膝を曲げて腰を落として動く。これも足を付け根から動かして重心移動を学ぶ為のもの。
素振りにしろ形にしろ、その目的は日常動作の作り変え。身に染み付いた悪い癖のある動き方を、負担が少なく効率良く咄嗟に動ける、武術的身体動作へと変える修練。
これは結構重要で、侍がいざというとき腰痛で動けないなんていうわけにはいかない。
(* ̄∇ ̄)「そうかも、しれないけど、だからって素振りしてたら腰痛が治るの?」
柔道整復師のルーツは古武術の『殺法』『活法』にある。日本では、かつて整骨は柔術家がやっていたものだ。それが明治維新で医療の線引きから変化した。整骨から整復と呼び方が変わったのもその為。
かつては柔術家が、人体の骨と関節と筋肉の専門家だったわけだ。身体に負担の少ない動き方ができるというのは、全身を効率良く使えるということでもある。
枯れ木のような老人が若者をポイポイと投げる達人、というのもこの人体の動作の効率化の延長にあるわけだ。
この古流武術の動作を現代に活かす、というのは、武術研究家の甲野 善紀 先生が、日常に役立つ古武術や、介護に役立つ古武術など著作等で紹介しておられるので、興味のある方は見てみて欲しい。
(* ̄∇ ̄)「介護に使えるの? 古武術?」
刀で斬り合う時代じゃ無いと言ったのは、小僧だろうに。
過去、自動車の無い時代、走ることを職業にしていた飛脚は1日で150キロ走ったという。
(* ̄∇ ̄)「時速じゃ無いよね? 距離だよね? でもフルマラソンの三倍以上かー」
かつての飛脚の走り方とか、いったいどういうものだったのか。松尾芭蕉も1日辺り50キロ移動していたという。
現代では成人男子の1日の移動距離は30キロから35キロといわれているので、これで松尾芭蕉もニンジャでは無いのか、とか言われたりするわけだ。
(* ̄∇ ̄)「じゃあ、武術を習えば1日で50キロ歩いたりできるようになるの?」
難しいだろう。過去の日本人の専門職の身体動作を現代に再現する、というのは。
しかし、武術的な身体動作から、介護に使えるとか、護身に役立つとか、研究するのもおもしろそうだ。
高齢化社会では 身体の動作を作り変え、歳をとっても膝や腰が痛くならない歩き方、歩法を学ぶ、なんていうのはこれからの時代に必要なんじゃないか?
また、私の個人的な考えだが、AI、人工知能の研究が進むのであれば、人の意識と人の身体の関係性というのも、見詰め直す時期ではないかと考える。
人は、自分の手足を本当に自分の意思通りに動かせているのだろうか? 自分の身体に鈍い人、自分の身体を蔑ろにしている人が、現代には多い気がしてならない。
必要以上の力で地面を蹴って歩いたり、地面を踏みしめたりと、関節を痛めそうな歩き方をしてその自覚が無い人が、けっこういる。
そんな歩き方が癖になると、歳をとったときに、膝が痛くて歩けないということになりそうだ。
( ̄▽ ̄;)「そういうこと考えて歩いてる人は、あまりいないんじゃないかな?」
効率化が好きな人は、自分の身体動作の効率化も研究してみてはどうだろうか。身体の一ヶ所に負担が来ないようにして、肩や腰を苛めない身体の使い方などを。
柳生の素振りは、少なくとも肩こりに効果はあるぞ。
武術研究家の甲野 善紀 先生の指導を取り入れて、腕と肩甲骨の連動を練習することで、バスケットボールのパス回しが速くなった実例がある。
バスケットボールで東京都でベスト8入りしたことの無かった学校が、古武術を取り入れた練習で翌年にはなんとインターハイに出場した。
(* ̄∇ ̄)「おお、ドラマチック」
野球にドラッガーのマネジメントを取り入れたもののように、映画化したりしないものだろうか? 古武術バスケ、とか。
( ̄▽ ̄;)「……小林サッカーみたいになるんじゃ?」
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