第三話◇剣道の審判、剣道の防具
剣道の試合で一本を取った取らないという判定は、審判が行う。
(* ̄∇ ̄)「手に赤い旗と白い旗を持ってるのが三人いる」
主審一人に副審二人の計三人。三人のうち二人、または三人全員が同じ色の旗を上げると一本になる。
防具を着けて打ち合う稽古となった時代、相手が『まいった』と言うまで勝負がつかない、ということがある。そんな負けず嫌いな人がいると困ることになる。ソッコー怪我人になる。鼻血が出ても骨が折れてもまいったと言わない。そいつがまいったと口にするまで、ひたすらボッコボコにすることになってしまう。
( ̄▽ ̄;)「それ、死んじゃう……」
実際に死人も出たことだろう。その状況をなんとかしようと、審判がつくようになりルールができる。
初期の防具を着けた竹刀稽古では、相手を押し倒し、組み伏せ、馬乗りになり相手の面をひき剥がす、これで相手の首を取ったとして一本勝ち、というルールもある。
( ̄▽ ̄;)「それ、竹刀いらないのと違う? レスリングみたいな……」
かつての戦場での、組み打ちから相手の首を取る練習にはなるのか。
人は痛い思いはしたくないもの、ケガとかしたくないものだ。同様に他人にも痛い思いをさせたり、ケガをさせたりすることを忌避するのがまともな人でもある。
(* ̄∇ ̄)「急に何? そりゃ人を痛がらせるのが好きなサディストの変態は少数派だろうけれど」
防具を着けて互いに竹刀でぶっ叩き会う稽古は、その精神的な忌避感を麻痺させるのに有効なんだ。この延長上に刀で人を殺す、というのがある。先ずはその前に、棒で他人をぶっ叩いても平気になる精神を育てる。
(* ̄∇ ̄)「防具をしっかりつけてて、硬くない竹刀だから大ケガしない。だから安心して人をぶっ叩いても良い、と?」
そういうこと。そして防具を着けた竹刀稽古は、短期間で使える剣士を育てるのに効率が良かった。これが防具と竹刀稽古が広まった要因で、これが剣道の下地になった。
剣道の防具の形にはこの昔の歴史が残っている。
例えば小手。指先までしっかりと覆いボクシングのグローブのようになっている。
(* ̄∇ ̄)「なんか、竹刀を握りにくそうだけど」
これは相手を拳で殴る為。相手の面を殴りつけて指を痛めないようにするために、指を守るように覆っている。人の指は細くて折れやすいから。
(* ̄∇ ̄)「え? 殴るって? 竹刀は?」
剣道になる前の時代では、竹刀稽古とは使える兵や剣士を育てる為のものでもある。また、武芸十八般と言うように、剣術の中に柔術や活殺術もある。掴み、殴り、投げ、なんでもありだ。
現代剣道の鍔迫り合いの距離なら、片手を竹刀から外して、相手を掴むのも、相手の横っ面を拳で殴りに行くのもアリだ。
( ̄▽ ̄;)「おおう、リアルバウト……。それ反則だよね?」
現代剣道では反則になる。
他にもまぁ、鍔迫り合いの距離だと、肘で相手の面の耳の辺りに肘打ちとか、片手を相手の竹刀の柄にかけて、相手が手を離さなければ、そのまま背負い投げにするとかあるけれど。
(* ̄∇ ̄)「剣道になる前はケンカというか実戦的というか。それが洗練されて剣道になっていった、と」
そんな感じ。ただ、短剣道においては左手で相手の腕を抑える制体技というのがある。相手の手を制しながらの打突で、これを技として取り入れている。
かつてはそういう稽古の為に作られた防具が、今も大きな形の変化も無く受け継がれ、現代の剣道で使われている。
竹刀が竹以外にもカーボンなど使われたり、面金が鉄からチタン、ジュラルミンと変わったりするが、防具の形は変わらない。小手は殴り合いを想定して作られた防具なんだ。
現代剣道では、パンチは無し。
小手を投げてロケットパンチとかして遊ぶのは、自分の小手で。後輩の小手を玩具にしてはいけません。
( ̄▽ ̄;)「……オッチャン、過去に何が……」
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