第十幕 珠の秘密

 それより四半時(約三十分)ほどの後、難を逃れた里人達は、めいめいの家の地下に掘られた緊急避難用の隠れ部屋より全員助け出された。女・こどもを中心に八割方の里人は無事でいたようである。


 ……だが、その中に珠の姿は見当たらない。


「いったい何があったんですか? お珠ちゃんは……珠姫さまは今どこに!?」


 里長の屋敷の焼け跡で、雷童丸はこの里の変わり果てた有り様と珠の行方についてオババさまを問い質した。


 すっかり黒焦げになった瓦礫の真ん中にあって、オババさまは地下室の入口を塞いでいたまだ温かい石蓋の上に腰を下ろし、昨日同様、若い巫女達四人を左右に控えさせた威厳ある姿で雷童丸と対峙している。


 皮肉にも、随分と見晴らしのよくなった頭上に広がる空はどこまでも青く澄み渡り、こんな状況ではあるが、晴れ晴れとしてなんとも清々しい風景だ。


「わからん。あの時、珠姫は屋敷の外に出ておったが、わしらも命からがら地下へ逃げ込むので精一杯じゃったからの……じゃが、死んだ者の中にもおらんかったところを見ると、おそらくは連れて行かれたんじゃろう……やはり珠姫が狙いだったとみえる」


「じゃあ、やっぱり織田の軍勢が攻めてきてこんなことを……」


 焼け野原と化した辺りの様子を見つめ、雷童丸は沈痛な面持ちでそう呟いた……が、そのすぐ後で、今、自分で発したその言葉に疑問を持つ。


「いや、それは変んだ……おいらは帰り道でそんな軍勢はおろか人っこ一人見やしなかった……それに、この里はおいら達以外には玉依の民しか知らないはず……じゃあ、いったい誰がこんなことを!?」


「まあ、攻められたというのは合うておるがな……」


 自問自答する雷童丸に、しわがれた声でオババさまが答える。


「だが、軍勢に攻められたわけではない……たった一人の者に攻められたのじゃ」


「一人? ……たった一人の者にこんなことが?」


 理解しかねるその言葉に、雷童丸は聞き返す。


「いや。正確には一人と一匹じゃな……この村の被害はその者自身より、その者が連れていた化物によるところの方が大きい」


「一人と一匹……その者が連れていた化物……って、まさか!?」


 そこまで聞くと、オババさまが何を言わんとしているのかを雷童丸も悟った。


「そうじゃ……この里を襲った者はおそらく呪士とその霊獣・・・・・・・じゃ!」


「………………」


 その、耳を疑うような彼女の台詞を耳にした雷童丸は思わず言葉を失ってしまう。


「まさか、そんな……呪士は因果応報の理に背くような戦いを掟で堅く禁じられています。その呪士がこんなことするはずが……何かの…何かの間違いじゃないんですか!?」


 俄かには信じられぬ……否、信じたくはない雷童丸は、もう一度、詰め寄るように確認する。


「いや、お前さんには悪いが、あれは呪士としか考えられぬ。なにせ、その者は槍や刀で突かれようともまるで傷付くことなく、さらには牛や馬などよりも遥かに巨大な恐ろしい蟹の化物を従えていたのじゃからの。里の家屋敷もすべてその大蟹によって破壊され、このように焼き払われたのじゃ」


 話を聞くにも、それは明らかに呪士とその霊獣の戦う姿を彷彿とさせている。


「……で、でも、例え呪士だとしても、おいら以外の呪士がこの場所を知る筈が……」


「そう! そこでじゃ。わしは初め、そなたが里のことを誰かに話したか、あるいはその里を襲った呪士と通じておったのではないかと考えた」


「いえ! おいらは誰にもしゃべってないし、そんな呪士も知りません!」


 オババさまの自分を疑う言葉に、雷童丸はすぐさま声を荒げて否定する。


「ああ、わかっておる。わしもすぐに考え直したわ。あやつが襲って来たのはそなたが出て行ってから半時と経たぬ後。そなたの口からこの里の場所が漏れ、それを聞きつけて来たにしては早すぎる。それに、もしもそなたがその気だったならば、こんな手の込んだことはせずとも直接自分で行えばいいんじゃからの。いや、そもそも珠姫を手に入れるのにわざわざ里を襲う必要すらないわい」


「じゃあ、一体誰が……」


 そう言いかけた雷童丸の頭の中に、ふと、ある人物の顔が浮かぶ。


 自分以外に珠のことを知り得る者……呪士……巨大な蟹の化物……。


「ま、まさか、あの間見さんが……」


「ん? そなた、襲って来た者を知っておるのか?」


 雷童丸の呟きに、オババさまも目を鋭く細めて尋ねる。


「いや、でも、間見さんだとしても、どうやってこの里の場所が……道中、誰かにつけられるようなこともなかったし、滝の裏の洞窟から出入りする時だって、辺りに人の気配はまるで感じなかったんだぞ?」


 ぶつぶつと独り言のように問う雷童丸だったが、今度はあの、間見の袖の中に入っていた大きな蟹の姿が不意に脳裏を過る。


「あの蟹か! あの蟹だったら沢の中に潜んでいたとしても気付かなかったはず……それに今日、沢筋の一本道を歩いている時に感じたあの気配も間見が隠行法おんぎょうほうを使っていたんだとすれば……例え一本道だろうと呪士なら隠行法で姿を隠し、おいらに気付かれずにすれ違うこともできたはずだ……クソっ! そうだったのか!」


「どうやら、その呪士に心当たりがあるようじゃの」


 ようやくカラクリの解けた雷童丸に、オババさまが再び問う。


「ええ。三日前に泊まった呪士宿で間見甲次郎という呪士と偶然一緒になったんですが、その呪士にお珠ちゃんが玉依の民の巫女で、神宮の近くにある隠れ里まで送って行くんだという話を思わずしてしまったんです。それに、その呪士の連れていた霊獣は化蟹だったし、おいらの他にお珠ちゃんのことを知っている呪士となれば……その間見しか考えられません!」


「なるほどの……で、その呪士の風体はどんな感じじゃった?」


「そうですね……歳は三十後半。中肉中背で、こうぴーんと立った茶筅みたいな髷をした、どこにでもよくいる武士って感じの人物でした。あ、そうそう、顔はこう彫りの浅い、薄くて平べったい感じで……」


 雷童丸は身振り手振りを交えながら、間見の特徴をオババさまに詳しく説明する。


「うーむ……わしは遠目にしか見ておらんが、もう少し近くで見た者達の話も合わせるに、どうやらその間見という呪士とみて間違いないようじゃの……そやつはどういう呪士なのじゃ? 織田方とよしみを通じておるのか?」


「おいらも詳しくは知りません……本人の話だと〝絶縁の呪士〟という呪士号を持っているようですが……ただ、その時会った様子では織田に通じている素振りはなく、掟に背いた外道の呪士のようにも見えませんでした。だから警戒もせずにお珠ちゃんの話をしてしまったんですが……」


 その自らの甘さが招いた油断を、雷童丸は今さらながらに後悔する。


「でも今から考えると、あの時すでに織田の依頼を受けていて、それでおいら達んとこに近づいてきたんだとも……そういえば、そもそもなぜ織田はそこまでしてお珠ちゃんを手に入れようとするんですか? その織田の欲しがっている力というのはなんなんです?」


 だが、話す内にすべての根幹を為すその疑問に再び突き当たると、前回、答えてはくれなかったその質問を改めてオババさまにぶつける。


「……こうなってしまっては、話さぬわけにもいかぬだろうの」


 しばし目を伏せて思案した後、諦めたかのようにオババさまは再び口を開く。


「よかろう。そなたを信じて、すべてを話してやるとしよう……」


 そして、避けては通れぬこの問題に、意を決して訥々と語り始めた。


「珠姫がなぜ〝姫〟と呼ばれておるか、そなたにはわかるかの?」


「さあ? ……そりゃあ、生まれも育ちもいい、お姫さまだからじゃないんですか?」


 オババさまの質問に雷童丸は小首を傾げ、ちょっと考えてから訝しげに当り前の理由を答える。


「まあ、普通はそう思うじゃろうの……じゃが、珠姫の場合はそのようないわゆる〝お姫さま〟と呼ばれる類のものではない」


「お姫さまじゃない? ……ああ、そういわれてみれば、お珠ちゃんも確かそんなこと言ってたような……」


「あの子もかわいそうな子での。幼き頃に両親を亡くし、他に身寄りもおらなんだために里の者皆で面倒をみて育てたんじゃがの。あの子は生まれた時の占いによって選ばれた子じゃったのじゃよ……〝クシナダの姫〟にの」


「クシナダの姫?」


 その聞き慣れぬ単語に、雷童丸は眉根を寄せて聞き返す。


「うむ。そなたも呪士ならば、『古事記』や『日本書紀』などを読んだこともあろう。その神代の物語の中で、神々の住む高天原たかまがはらより追放された須佐之男命すさのおのみことが、降り立った出雲の地で八俣大蛇やまたのおろちを倒し、その生贄となっていたところを救い出して妻にしたのが櫛名田姫くしなだひめじゃ」


「ああ、その神話の女神さまならおいらも知ってます」


「有名な話じゃからの。じゃが一説に、櫛名田姫は須佐之男命と神婚し、神に仕えた巫女であるとも云われておる。その女神の名を賜り、同様に須佐之男命を降ろせる力を持った巫女が〝クシナダの姫〟じゃ。珠姫は生まれながらにその才を天より与えられておった。同時にその辛く厳しい運命もな……」


「辛く、厳しい運命……」


「他の玉依の民の巫女も幼き時から厳しい修業を積んで育つが、あの子はそれに輪をかけて、年端もいかぬ頃より同年の子らと遊ぶことさえ許されず、独りクシナダの姫としての特別な修業を強いられて育ったのじゃよ」


「あのお珠ちゃんが、そんな重たいものを背負っていただなんて……」


 初めて知った珠の過去に、雷童丸は感慨深げに呟く……そして、彼女の言っていたように、確かに自分と珠とではその境遇がどこか似かよっていることを改めて認識させられた。


 同じく彼も幼き頃より呪士生として厳しく育てられてきた身の上である。


「その、須佐之男命を降ろす力というのが織田の求めている力なんですか?」


 なんとも物寂しく、儚く胸を締めつけるその感情を隠すかのように、雷童丸はオババさまに続けて尋ねる。


「それ以外、珠姫を狙う理由は考えられぬじゃろうな……」


「でも、それって今や天下の織田がそれほどまでして手に入れたいようなものなんですか? そりゃまあ、おいら達呪士も神仏の力を借りて戦いますから、神さまの力の凄さっていうのはわかりますけど……だけど、それならここを襲った間見のように、どうやら織田に味方する呪士もすでにいるようですし、神さまを降ろすんだったら他の巫女でも別にいいはずです。そんな、わざわざお珠ちゃんだけに執着しなくとも……」


「いや、クシナダの姫の力は特別じゃ!」


 頭に浮かんだ疑問を早口に並べる雷童丸だったが、その口をオババさまの厳しい一声が不意に塞ぐ。


「確かに他の巫女や呪士、まじない師などでも神を降ろすことは可能じゃがな。クシナダの姫の降ろすスサノオはそれらとは格が違う」


「格が違う? ……どう違うんですか?」


「クシナダの姫はの、須佐之男命そのもの・・・・をこの地に呼び寄せるのじゃよ」


「そのもの?」


 雷童丸は、相槌を打つかのように鸚鵡返しに聞き返す。


「須佐之男命とは〝すさぶる男の神〟を意味する名……また、かの神は仏教に云う武塔神むとうしん――疫病神の大軍を引き連れて旅をする嵐の神・牛頭天王ごずてんのうと同一神であるとも云われておる……即ち、須佐之男命の正体は荒れ狂う暴風雨。クシナダの姫はその巨大な嵐をまるごと呼び寄せることができるのじゃ」


「それが、お珠ちゃんの能力……そして、織田が執拗に狙っている力……でも、なんで織田はそんな嵐を? 一体何に使うつもりなんですか!?」


 珠の力の秘密を知った雷童丸であったが、それでも解せぬその疑問を目の前のオババさまにぶつける。


「それはわしにもわからぬ……ただ、これほど強引に珠姫をさらって行ったところをみると、織田は近い内にクシナダの姫の力を使って大嵐を起させるつもりじゃろう。向こうには呪士もおるし、いくら珠姫が拒んだとしても、外から神憑かみがかりにすることとて可能じゃろうからの……今言ったように、クシナダの姫の呼び寄せるスサノオの力は絶大じゃ。なんの目的があるにせよ、織田に理不尽な力を与えてしまうのは確かじゃ……」


「理不尽な力が織田のものに……おいらの…おいらのせいだ……おいらが不用意に話してしまったから……それに、あの妙な気配を感じた時にすぐ里へ引き返していれば……」


 雷童丸は焦点の合わぬ目を小刻みに揺らし、仄かに温かい灰色の地面の上に崩れ落ちると震える声で呟いた……自分の油断が取り返しのつかない事態を招いてしまったという、その隠すことのできぬ事実に押し潰されながら。


「よもや呪士が掟を破り、織田方に通じているとは思わぬだろうからの。そなたばかりを責めることもできまい……」


 オババさまは動揺を噛み殺すかのように静かに目を閉じると、外見的にはとても落ち着いた声で雷童丸に言った。


「じゃが、そこもとを呪士と見込んで頼みがある……」


 そして、俄かに目を見開くと、その黄色く濁った眼でしっかりと雷童丸の顔を見据えて彼に告げる。


「珠姫を取り返してほしい……織田の手の中よりクシナダの姫を」


「おいらが……」


 自分の犯した失態への懺苦と恐怖の念に捉われ、雷童丸はその答えに言い淀む。


「織田がクシナダの姫の力を得ることは、因果応報の理を明らかに無視した理不尽な行い……そなた達呪士としても介入する理由は充分にあるはずじゃ。そなたがこの里へ珠姫を連れて来てくれたのも何かの縁。頼む。珠姫を救い出してくれ!」


 そう述べ終わるとオババさまは石蓋から腰を下ろし、雷童丸に向かって頭を下げた。それにつき従うかのように、左右に控える巫女四人も一斉に音もなく平伏する。


「………………」


 無言で立ち尽くしたまま、雷童丸はしばしの間逡巡した。


 因果応報……その、呪士が最も大切とする理念を現した言葉が彼の頭の中に木霊する。


「……そうだ。因果応報の均衡を崩してしまったのはおいらだ。おいらにはその壊れた均衡を取り戻す責任がある……それに自分の失敗でお珠ちゃんを奪われたおいらが、そのお珠ちゃんを救い出すのは当然の理だ……」


 膝を突き、地を覆う灰と炭に向けられていたその声にだんだんと力が籠ってくる。


「己の失敗という原因に対して、その償いという結果を示すことこそ、まさに因果応報……そうだ。それこそがおいらの務めだ。オババさま、おいらは呪士として、因果応報の均衡を守るためにお珠ちゃんを救い出す! この鳴神の呪士、兵主雷童丸の手で!」


 呪士としての誇りが、挫折に打ちのめされたまだ若き彼の心を再び奮い立たせる……そして、実際にも立ち上がり、その曇りのない眼に生気を取り戻すと、灰に塗れた右手の拳を固く握り締め、雷童丸は力強く玉依の民達に宣言してみせた。


「おお! このオババの頼み引き受けてくれるか! かたじけない……玉依の民を代表して礼を述べる」


 以前よりもどこか頼もしくも見える雷童丸に、オババさまと巫女達はもう一度頭を下げる。


「いや、よしてください。これはもう玉依の民だけの問題じゃありません。呪士の…いや、おいらの問題でもあります。それじゃ先を急ぎますのでおいらはもう行きます。必ずお珠ちゃんを取り戻して来ますから安心して待っててください! 行くぞ、三日鎚!」


 平伏するオババさま達に、そう言い残すが早いか傍らの三日鎚に声をかけ、踵を返すとすぐにでも里を発とうとする雷童丸であったが。


「珠姫の行き先に心当たりはあるのか!?」


 その背中を、オババさまの大声が呼び止めた。


「……ない……ですけど、とりあえず、その間見と一緒になった御蔭屋という関宿の呪士宿に行ってみるつもりです。もしかしたら、そこの主が何か聞いているかもしれません!」


「そうか……なれば少々道草を食うことになるが、その前に内宮に寄っていくがよい」


 駆け出したままの姿で立ち止まり、顔だけを振り向かせて答える雷童丸にオババさまはそんな助言を与える。


「内宮? ……いや、神の御加護は得たいところですが、そんな悠長にお伊勢参りなんかしてる暇は…」


「そうではない。内宮に行って、そこにおる呪士に会うのじゃ」


「呪士?」


「うむ。少々馴染みのある呪士での。日輪にちりんの呪士・日女神子ひめみこという」


「日輪の呪士……そういえば聞いたことがある。伊勢の内宮に住み、呪士連とも交流を持たずにただただ天照大御神あまてらすおおみかみに仕えて暮らしているという……その日輪の呪士と玉依の民は親しいんですか?」


 予期せず飛び出した噂に聞く異色の呪士の名に、今度は身体ごとオババさまの方へ振り向かせて雷童丸は尋ねる。


「玉依の民というよりわし個人の馴染なのじゃがな。ほれ、この里から内宮へも近いゆえの」


「でも、日輪の呪士に会ってどうしろっていうんですか? 聞いた話じゃ、とてもこうした世俗の争いに手を貸してくれる人のようには……それに他の呪士に助けてもらわなくたって、お珠ちゃんはおいら一人の手で救い出してみせます!」


「いや、もしすでにクシナダの姫の力を発動させていたら、いくらそなたが呪士とて珠姫を止めることはできぬ……それを止められるとすれば、おそらくは日輪の呪士である日女神子ただ一人のみ。万が一の事態に備え、日女神子に会うてその方法を授けてもらうのじゃ。なに、クシナダの姫の話を出せば、日女神子とて力を貸してくれよう」


 強い意志を持って言い切る雷童丸だったが、それに水を差すかのようにオババさまは諭す。


「おいらでは無理? ……なぜ、日輪の呪士でなければお珠ちゃんを止められないんですか?」


「それは日女神子に会うてみればわかる……おお、そうじゃ! これを持って行け! それを見せ、神宮のオババの遣いと言えば日女神子も信用するじゃろう」


 なんだか納得のいかぬ顔の雷童丸にそう言うと、オババさまは首にかけていた勾玉の首飾りを外し、それを彼の方へ投げて寄こす。


「おおっと……」


「さあ、急ぐのじゃ! 兵主殿……いや、鳴神の呪士殿よ!」


 そして、慌ててそれを掴む雷童丸を、自分で足を止めておきながら早々出立するよう大声で急き立てる。


「……は、はい! よし、今度こそ行くぞ! 三日鎚っ!」


 オババさまの話にいろいろと疑問を残しながらも、雷童丸は今度こそ珠の救出に向け、焦げ臭い空気の漂う村を全速力で駆け出した。

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