文学で大切なのは、文章の巧みさでも、奇抜なプロットでもありません。伝えたい想いです。人と動物の関りの中には、ふっと寂しくなるような悲劇が生れがちです。
冒頭から展開されるどこか日記的・ドキュメンタリー的文体によって、非常にリアルな世界観へと誘われる。確かに「日常」ではないけれど、漫画やアニメの非日常とも異なった、「現実的な非日常」だからこそ、読者は主人公と共に、事の成り行きを見守ってしまうのだろう。
タイトルに台風とついていますが、辛い話や悲しい話ではありません。優しいお話です。劇的なオチはないのですが、だからこそリアルな物語になっています。翻弄された(たぶん優しい)人たちは最終的にどうしたかったのか、それも語られてられていませんが、かえっていい余韻を残しています。ぜひ、皆さんも読んでください。
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