14話 岸部結衣 危機一髪

 6月13日(水) 2時間目終了後

 結局、水曜日になっても何も起こらない。 もしかしたら、気のしすぎ、もしくは森野の友人の聞き間違いだった、そう願いたい。 しかし、その願いを嘲笑うかのように柔道部の蔵田と我妻はその頃、旧柔道部室へ小さな窓から侵入し。 中へ入り、中から鍵を開けた。

 「よし。 これで大丈夫だな。」

 蔵田が言った。

 「あぁ、後はあいつがここまで連れてこれば。」

 「とりあえず、4時間目は途中まで受けるぞ。 そして、終了前になったら便所に行くフリをして、ここに来る。」

 「分かった。」


 そして4時間目終了後

 岸部結衣は、体育館での体育を終え教室へ戻る途中、クラスメイトに「先生が体育教官室まで来いって言ってた。」と、言われ。 結衣は、体育教官室への近道となる、旧柔道部室の近くを歩いていた。

 「そういえば、この近くに旧柔道部室があったような…。!」

 結衣は、少し慌てて周り道をして、体育教官室へ向かおうとしたが、後ろから我妻に襲われ、気を失ってしまった。

 「ふふふ。 ははは…」

 我妻を笑い声を上げた。

 「おい。 我妻、笑うのは後にして早く、連れ込め! 中で、服の解剖でもしながら金子を待とうじゃあないか。」

 蔵田にそう言われた、我妻は二人で旧柔道部室に岸部結衣を、運び込んだのだった。


 眠い、腹減った。 そんな事を思いながら、僕は4時間目の授業を受けていた。

 そして、4時間目の終了と同時に金子がどこへ走っていた。

 「なんだ? あいつ、トイレにでも行きたかったのか?」

 そのような事を、周りが話していた。

 もしかしたら、トイレじゃあなくて? いやいや、これ以上考えるのはよそう。 まさか、学校内で姉を襲わないだろう…。


 しかし、裕樹の想像は外れており。 旧柔道部室では、既に結衣は上着を脱がされ、下着があらわになっていた。

 その時、旧柔道部室のドアを誰かがノックをした。

 「金子です。」

 それを聞いた蔵田は

 「お前は後からだ、今は俺達が楽しむからお前は見張りを頼む。」

 「分かりました。」

 そう言って、金子は見張りを始めた…。


 僕が弁当を食べていると、島崎さんがただのクラスメイト風に、だが周りに聞こえないような小さな声で

 「ねぇ。 岸部君。」

 「うん? なに?」

 「旧柔道部室の前に、金子が立ってたんだけど? もしかしたら…。」

 それを聞いた時、すべてが分かった。

 僕は立ち上がり

 「ごめんだけど。 急いで先生を呼んできて! それと、一応 結衣の席から着替えも持ってくるように、他の先生に言っていて。」

 「えぇ。 分かったわ。」

 そして、島崎さんは職員室へ、僕は旧柔道部室の方へ向かった。

 そして、僕は旧柔道部室が見える場所まで来たが、今行ったとしても恐らく、しらばっくれられて、中に入ったとしても、 太刀打ちが出来ない。 一体どうしたら?

 その時、後ろから誰かに呼ばれた。

 「おい。 岸部、一体何をしてるんだ?」

 僕は後ろを振り向くと、そこには…


 その頃、岸部結衣は気がついていたが、両手首と口をガムテープで塞がれていた。

 「うむ うん うーん。 うーん。」

 「ふん。 叫んでも無駄だぜ、ここの部屋以外と防音性が高いからな。 ここだったらどんな大声を出しても、誰にも聞かれないぞ!」

 そう言いながら、我妻は結衣のズボンをずらした。

 その時、外から声が聞こえた。

 「おい! 金子、そこで何をやっている!?」

 「い、いえ。 何でもありません。」


 「クソっ! 先公かっ!」

 蔵田が言うと、同時に扉が勢いよく開いた。

 「おい! お前ら、何をやっている!?」

 そこいたのは、竹崎先生と、結衣の制服の入った袋を持った裕樹だった。

 「お姉ちゃん!」

 二人は部屋の中へ入り、蔵田、我妻の元へ。

 裕樹は、結衣の元へ行きとりあえず自分の制服を結衣にかけ、口と両手首にされていたガムテープを外した。

 「あ、ありがとう。 裕樹~。」

 結衣は、泣きながら裕樹に抱きついた。

 「それで? お前達がやった事の重大さがわかっているのか?」

 竹崎は、我妻、蔵田に聞いた。

 「俺達はただ、結衣先輩が寂しがっていると聞いて、慰めようと。」

 蔵田が言うと

 「慰めるのに、服とズボンを脱がす必要があるのか!?」

 今、説教する? 一人、服とズボンを脱がされたままの人が居るんだが…。

 「あ、あの~。 先生。」

 「なんだ? 岸部。」

 「お姉ちゃんが、制服に着替えたいので出ていてほしい。 らしいです。」

 その結衣は、今裕樹に隠れてなんとか見えないようにしていた。

 「あぁ。 すまない。 それじゃあ、お前ら生徒指導室へ行くぞ。 金子もだ!」

 そして、竹崎先生、金子、蔵田、我妻は生徒指導室へ向かった。

 「それじゃあ、僕は外で待ってるよ。」

 「待って!」

 「なに?」

 僕は、姉の下着を出来るだけ見ないように後ろを振り向くと。 姉は、怯えるように僕の背中に頭を当てていた。

 「それじゃあ。 ドアだけ閉めて来るよ。」

 そう言い僕はドアを閉めた。 この状況、姉とはいえ、密集に女子と二人きり。 しかも、その女子は、服もズボンも身につけていない。

 僕は、姉の方を見ないようにドアの近くに立っていた。

 後ろからは、着替える音が聞こえてくる。

 「裕樹。 ごめん、私何の抵抗も出来なかった。」

 姉が、少し鳴きながら言ってきた。

 「いやいいよ。 相手は、柔道部の二人だったんだし。」

 「そ、そうね。 もう良いわよ。」

 そう言うと、ドアを開け外へ出て行った。

 その後に僕も続く。

 「ここの鍵、先生持っていったな…。」

 僕が言うと、姉は

 「生徒指導室に行けば、居てるんじゃあない?」

 「そうだな。 あっ、そういえば先生によると金子は…」


 そして、僕達は生徒指導室へ行くと、生徒指導室の前で、金子が別の先生から大量の紙をもらっていた。

 僕達に気づいた、金子は貰った紙を床に置き、僕達二人に頭を下げた。

 「ごめんなさい。 俺、二人に迷惑をかけて。 しかも、岸部先輩に不快な思いをさせて。 本当に申し訳ございません。」

 と言ってきた、そして姉は怒るのではなく、優しく。

 「あなたも犠牲者でしょ?」

 と聞いた。

 「えっ? で、でも俺は…。」

 「さっき、裕樹からすべて聞いたわ。」


 それは、旧柔道部室に乗り込む前に、竹崎先生と会った所から

 「おい。 岸部、一体何をしてるんだ?」

 僕は後ろを振り向くと、そこには、姉の制服が入った袋を持った竹崎先生がいた。

 「えっ? 先生、早いですね。」

 「なにがだ?」

 「えっ? 島崎さんに言われて、来たんじゃあないのですか?」

 「あぁ。 島崎には会っていないよ。」

 「それじゃあ、なんでここに?」

 「金子が教えてくれたんだ。」

 「金子が?」

 「あぁ。 彼は脅されていて、その脅しを避けるには、どうにかして岸部 結衣の辱しめを見させろ。 と、柔道部の蔵田、我妻に脅されている。 って、俺のところに相談してきたんだ。 そして、俺は話を詳しく聞くと、水曜日に旧柔道部室で襲うらしい。と言われてここに来たということだ。」


 その事を、姉にも先程伝えたのだった。

 「それで、その紙は?」

 僕が、金子に聞くと

 「反省文さ。」

 「反省文って、お前。 それA4用紙だろ? 何枚あるんだ?」

 「10枚。」

 その会話を聞いていた先生が

 「別に良いと言ってるのだがな…。」

 「いえ。 それは、岸部裕樹と岸部結衣先輩に迷惑をかけた分です。」

 「別にいいよ。」

 姉が金子に言った

 「えっ?」

 金子が驚いたように

 「だから、別にいいよ。 これからも、裕樹と仲良くしてくれたら。」

 それを聞いた、金子は泣き出した

 「あぁ、本当にありがとうございます。」

 そう言い、金子はA4の紙を先生に返し、僕達は教室へ戻った。

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