5話 女子二人と行く日本橋 前編

翌日、金曜日の帰りは僕と姉、島崎さんの3人で帰っていった。

 僕は、二人に聞いた。

 「そういえば、明日は何時頃に行く?」

 「私はわからないから、二人に任せますよ。」

島崎が返してきた。

 姉が提案してきた。

 「そうだねえ。 9時頃に東貝塚駅集合にする?」

 「そうだな。」

 僕はスマホで電車の時間を調べ始めた。

 「だったら。9時5分の普通で日根野に行ってから、天王寺に行こうか。」

 僕が言うと、島崎が聞いてきた。

 「何で、日根野に戻るの? そのまま、天王寺方面に乗って東岸和田で快速に乗り換えた方が良いと思うけど?」

 「朝の時間だったら、日根野始発の快速 天王寺行きが走ってるから座れるんだよ。」

 「なるほど、それが乗り鉄の知恵ってやつ?。」

 僕と島崎の会話を聞いてきた、姉が少し嫉妬したような表情で

 「数少ない裕樹の知識だからね。」

 「その言い方は、どういうことだよ?」

 「そのままだけど?」

 僕と姉のやりとりを聞いていた、島崎がくすくすと笑いながら

 「二人って仲がいいね。」


 そして翌日、僕と姉は8時50分頃に東貝塚駅に着くと既に島崎が待っていた。

 普段の学生服と少し違って、全身黒色のスカートとジャケットを羽織っていて、なんだか少し可愛い見えた。

 「お、おはよう。 島崎さん」

 「おはようございます。 今日はよろしくお願いします。」

 「と、とりあえず、入ろうか。」

 「岸部君、どうしたんですか? いつもより緊張してる様子だけど?」

 島崎が聞いてきたのを、姉が返した

 「裕樹はね、濃い色の服装が好きなのよ。

 それに、女子の私から見ても、今日のあなた結構きれいだし」

 「そ、そうですか? 私、濃い色の服装しか持ってなくて。」

 「だったら今日、服とかも買おうか。 私がコーディネートしてあげるよ。」

 「本当ですか? 嬉しいです。」

 女子二人の会話を聞きながら僕は、僕たちはICカードで改札内に入った。

 そして僕たちは、普通電車で日根野駅に向かった。


 日根野駅で降りると、島崎は少しわくわくした表情だった。

 「どうしたの、島崎さん?」

 僕が聞くと、彼女は

 「だって日根野駅って、関空快速と紀州路快速の連結、解結が見れるんでしょ?」

 「あぁ、確かそうだな。」

 「私見るの、久しぶりなんですよ!」

 日根野駅では、大阪方面から来る、8両編成の関空/紀州路快速が当駅で前4両の関空快速 関西空港行きと、後ろ4両の紀州路快速 和歌山行きの切り離しと、その逆行きの連結が日中15分間隔で見れるとあって、少し有名な駅なのである。

 「だったら、丁度よかったかも。」

 「何が?」

 姉が聞いてきた。

 「乗る予定の快速が出るまでに、連結も切り離しも見れるから。」

 「本当ですか!?」

 島崎が今まで見たことないような、キラキラした目で見てきた。

 その時、切り離しをする、関空/紀州路快速 関西空港/和歌山行きが接近メロディと共に入ってきた。

 そして少しして、前の関空快速が日根野駅を出ると同時に、紀州路快速と分かれた。 その様子を島崎はスマホで録画していた。

 関空快速が出ていくと、反対ホームでは紀州路快速と、関空快速が今まさに連結しようとしていた、そしてガチャンという大きな音を立てて、電車は連結した。

 さっきは、両方とも見れると言ったが、だいたい同じタイミングだから、どちらかしか見れないのだが。 どうやら、今連結した紀州路快速が和歌山駅での接続待ちで5分ほど遅れていて、そのおかげで少しずれて見れたようだった。 島崎さん、もしかしたら幸運の持ち主なのかもしれない。


 その後、僕たちは予定通り快速 天王寺行きに乗り、2人座席を向かい合わせにして、進行方向の窓側に、姉が僕の隣に、島崎さんが僕の向かい側に座った。

 島崎が僕に聞いてきた。

 「そういえば、どうやって日本橋まで行くんですか?」

 「う~ん、そうだな。 これで途中の三国ヶ丘まで乗ってそこから南海高野線に乗るか、天王寺まで行ってそこから地下鉄御堂筋線か、大阪環状線に乗って新今宮に行って南海に乗るか。

 島崎さんはどれがいい?」

 「えぇ、えーと。 だったら、三国ヶ丘から南海で。」


 う~ん、ここは? というか寝てたのか

「次は三国ヶ丘です。 南海高野線はお乗り換えです。 三国ヶ丘を出ますと、次は堺市に止まります」

 という、放送で僕は全てが分かった。

 あぁ、鳳を出たところか…、二人は?

 島崎さんも、姉も寝ていた。 二人とも、寝顔可愛いなぁ。

 車内はそれなりの混雑だが、2人座席を向かい合わせた、4人のボックス席の余った1席には誰も座ってなかった。

 僕は、二人を起こした。

 島崎が目を擦りながら、聞いてきた。

 「う~ん? 今どのあたりですか?」

「今は鳳を出たところだから、もうすぐ着くよ。」

 「まもなく、三国ヶ丘です。…」

 電車が三国ヶ丘に着いたので、僕たちは少し急ぎながら電車を降りた。 この駅から乗る人も結構居てるらしく、多少の列が出来ていた。

 僕たちはそのまま、JRの改正を出て南海の改正に入った。 南海のホームに行くと僕は、鞄の中から一眼レフカメラを取り出した。

 姉が聞いてきた

 「裕樹、持ってきてたの今日?」

 「一応ね、南海高野線って乗りそうで、あまり乗らないから。それに阪和線は特急以外の電車しか止まらないけど、南海の方は各停と準急しか止まらないから、結構電車待ちの間に電車が来るんだよ。」


 南海高野線は、途中の中百舌鳥(なかもず)から分離する泉北高速鉄道(せんぼくこうそく)の車両も走っている為、それなりの本数があるのである。

 実際に作者は、本作品の下見(ロケハン)的な事をやっており、南海三国ヶ丘駅にも行ったが各停一本を待つ間に、上下線合わせ8本ほどの電車が通過していった。


 難波行きの電車が数本通過していくと、6000系4連の各駅停車が入ってきて、僕たちはそれに乗った。

 島崎が聞いてきた。

 「そういえば、南海高野線は結構な本数走ってるけどもどっか緩急接続(列車待避)とかしてるの?」

 「うん。 確か、ここから難波までの間だったら次の堺東で急行と準急の待ち合わせと、住吉東で通過待ちをするね。」

 「だったら、次の堺東で急行に乗り換えるんですか?」

 「うん、そうだな。 今宮戎駅と萩ノ茶屋駅の面白い所は知ってる?」

 「私、南海に乗るの初めてなので知らないです。」

 「だったらこのまま乗っていってみようか。」

 「はい。」

 電車は堺東に着き、2本の電車の待ち合わせをしている。

 というか、さっきから姉が一言もしゃべってないのだが。

 僕は少し心配になり、姉に聞いてみた。

 「お姉ちゃん、どうしたの?」

 姉は、小さくあくびをしながら

 「ふわぁ~、まだ眠いだけよ。」

 「昨日、寝れなかったの?」

 「うん。 考え事してたら、寝れなくなっちゃって。」

 島崎が聞いた。

 「考え事?」

 「えぇ、乙女の悩み…。」

 「それだったら、私が聞きましょうか?」

 「ありがとう、でも今はいいわ。 今度、悩みをあなたにぶつけるわ。」

 「えぇ、どんとこいです。」

 僕は、二人の会話をただ聞いていただけだった、恐らく乙女の悩みというのは、いくら弟といえども僕が聞くのは、あれだよな。


 その後は、他愛もない話をしていると南海本線と合流し天下茶屋駅に着いた。

 この先、天下茶屋・萩ノ茶屋・新今宮・今宮戎・なんば間は、東側の2本を高野線、西側の2本を南海本線が並んで走っており、定期的に南海本線と高野線の並走(バトル)が見れるが、ほとんどの場合、南海本線が勝利する。(なんば駅手前での信号待ちで、高野線が先行する場合もある。)

 島崎と僕は並走する南海本線の空港急行との並び(西側)を見ていた、ちなみに姉は寝ている。

 そして、電車が萩ノ茶屋に着いたが 空港急行は通過していくというより、南海本線にはホームがない。

 島崎は逆側を見た、逆側(東側)はホームもあるし、扉も開いている。

 「えっ? どいうことですか?」

 島崎が聞いてきた。

「まぁ、見ての通りさ。 高野線にはホームがあるけど、南海本線にはホームが無いんだよ。

 それに、高野線の全部止まる電車は各駅停車って、呼ばれてるけど。 南海本線の全部止まる電車は、普通と呼ばれてるんだよ。

 実際になんば行きの、両列車の放送では、高野線は「なんばまで各駅に止まります。」って言ってるけど、普通は「天下茶屋までの各駅と、新今宮に止まります。」っていう放送をしてるんだよ。」

 「へぇ~、勉強になります。」


 その時、姉が起きた。

 「う~ん? ここは…萩ノ茶屋か、ふわぁ~。」

 「あっ、おはよう、お姉ちゃん。」

 「おはようございます。」


 そして電車は、少しするとなんば駅に着いた…




 今回はここまでです。結構、鉄道用語が多すぎた回だったと思いますが。 分からない事は、ネットなどで調べながら読んでいただけると、面白さが、より増すと思います。



 次回、女子二人と行く日本橋 後編

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