18話 阪高祭りと…

 7月20日(金曜) 終業式


 「夏休みだからといって、勉強を疎かにしてはいけません…」

 僕達は、今教室で放送にて校長先生の長すぎる放送を聞いている。 何でも、体育館だと熱中症の危険があるから、放送で行っているらしい。

 「それでは、皆さん。 何事もないよう、気をつけて夏休みを過ごし、2学期になればまた元気な皆さんの姿を見ることを、楽しみにしています。

 はぁ、やっと終わった。 15分ぐらいあったぞ。

 「それじゃあ、校長先生のありがたい、長い放送も聴き終わったので解散とします。 それでは、皆さん、また2学期に。」

 竹崎先生がそう言うと、僕は後ろから叩かれた。

 「一緒に帰ろうぜ。」

 後ろを向くと、森野だった。

 「いやぁ、ごめん。 ちょっと、用事あるから。」

 「そうか? だったら、他を誘うわ。」

 「すまないな。 そういえば森野は、あしたの阪高夏休み行くのか?」

 「そのつもりだが、1年だからどんなのか気になるしな。」

 「確かにそうだな。 僕も明日行くからまた明日な。」

 「おう。 また明日。」


 森野には、用事がある。と言ったが、本当の事を言うと考えた事をしたくて、一人で帰るのだった。 島崎さんは、姉と一緒に帰るらしいし。

 その島崎さんだ、彼女は僕の事をどう思っているのだろうか。 僕には分からない、もちろん僕自身の彼女への気持ちも、整理ができていない。 しかし恐らく、彼女よりの友人というような立ち位置だと思う。


 同じ頃、島崎 理沙は、岸部 結衣を待つ為校門の近くにある自販機の前にある、ベンチに座っていた。

 私は、裕樹君の事をどう思っているのだろう…。 でも、最近 彼の近くに居てると、心臓の鼓動が早くなり、周りにも聞こえそうになる時がある。 それって、つまり裕樹君の事を…。

 「いやいや、とりあえず。 明日、明後日の事を考えよう。」 私はそう言うと、ビタミン炭酸を飲んだ。 これで、少しでも気が楽になればと…。

 「お待たせ、島崎さん。 待った?」

 その時、結衣さんが学校から出てきた。

 「いえいえ、全然待ってませんよ。 それじゃあ、帰りましょうか。」


 そんな二人の気持ちが整理が出来ていない状態で…

 7月21日 17時30分 阪校夏祭りは始まった


 僕は、姉に先に行っといてと言われ、先に学校に来ていた。 普段は、サッカーゴール以外これといって何も無い、運動場の真ん中には櫓が立っており、それを中心にして先生達でやっている、お好み焼き、焼きそば、フランクフルトなどの食べ物屋や、射的、くじ引きなどがあった。 しかし、姉が言っていた生徒指導部の屋台どころか、生徒指導部の先生が誰も見当たらなかった。 それに、芸術の先生も誰もいないような…。

 その時、突然後ろから声がした

 「生徒指導部や芸術の先生などの、一部は校舎内でもやってるわよ。」

 僕は、声の聞こえた方を見ると、浴衣姿の姉と島崎さんがいた。

 「まぁ、校舎内での事は裕樹には言ってなかったけどさ。」

 「なるほどどおりでこういう時には、うろちょろしてそうな生徒指導部の先生が何処にもいないはずだな。 というか、そんな事よりその格好は?」

 僕が二人に聞くと姉は

 「うん? なにって浴衣だけど?」

 姉は黒に花火の柄がで、

 「やっぱり、私の浴衣姿おかしいですよね?」

 そして、島崎さんが水色に青や紺色の水玉が入った柄だった。 というか、浴衣着て分かるけど二人とも結構スタイルいいなぁ。

 「いやいや。 おかしいとかじゃなくて、あまりにと二人とも似合ってたからさぁ…。」

 「そうですか? うれしいです。」

 島崎さんの顔は赤くなっていた。

 「そういえばさぁ二人とも、貴方達二人の関係クラスメイトとかに、バレてもいいの?」

 僕は、島崎さんの顔を見た後

 「まぁ、良いんじゃあないのかな。 そもそも、クラスメイトはこうなることを予知というか、期待してたと思うし…。」

 実際、周りを見回すとクラスメイトが数人こちらを、たまに見ていたりする。

 「私も別にいいです。 私達の関係って、同じ趣味をもった友達同士じゃないですか。 それ以上でも、それ以下でもないと思います。」

 島崎さんが言うとおり、姉は少し呆れた表情になり。

 「まぁ、二人がそう言うのなら良いけど、さっきの状況見たら、友達以上の関係に見えるんじゃあないのかな。」


 「と、とりあえず。 色々回りましょうよ。 色々とあるみたいですし。」

 島崎さんの一言で、僕達は阪高祭りを堪能するため、とりあえず屋外にあるお好み焼き、たこ焼き、かき氷、わたあめ等を食べた後、校舎内に入り、芸術の先生達が視聴覚室でやっている映画観賞を楽しんだ後、生徒指導部の部屋に行くとそこで、生徒指導ガラガラ抽選会をやっており、白が出ればお菓子一個もしくは缶ジュース一本、黄が出れば図書室の本一ヶ月借り放題券、赤が出れば保健室のベッド使用券、そして、青が出ればコンピューター教室のパソコン昼休憩使用券だ。 しかし、回せるのは一人につき一回だけ。

 内容が内容だけに、今日一番の行列だった。しかし、皆持っていくのはお菓子や缶ジュースばかりだった。 そして、結局10分近く待ち僕達の順番が来た。 ガラガラ抽選会担当は、竹崎先生だった。そして、竹崎先生は僕達三人を見ると

 「おっ、噂どおりだな。」

 と言い、周り見回りしてから僕達だけに聞こえるような小さな声で

 「黄もしくは青が当たったら、君達三人の取り分にすると良い。 さぁ、回せ!」

 噂って、なんのことか分からなかったか。 僕から…

 結果は…、白だった…。

 僕は竹崎先生から缶のサイダーを貰い、次の島崎さんの番になった。

 そして、島崎さんが回し、出てきたのは…、赤色だった。

 「「おぉ~。」」

 周囲が一気に盛り上がった。

 「おめでとう! 赤は一個しか入って無かったから、島崎理沙さんは幸運です!」

 竹崎先生が、より一層盛り上げる。

 「「おぉ~、島崎、島崎。 うぇ~い!」」

 なんだこの盛り上げるは、後ろで待っている数人が万歳三唱始めたぞ…。

 次の番は姉…。

 姉は、かなりの緊張の様子だった。 そりゃあ、自分の前があそこまで盛り上げれば。 そりゃそうか…。 そして、姉が出したのは青だった…。

 島崎さんと竹崎先生を除いた、僕を含めたその場に居たほとんどが叫んだら。

 「「まじかーー!」」

 「なんと、2連続で白以外が出るという! この二人は、幸運の持ち主なのかもしれない!」

 竹崎先生がまた盛り上げる。

 「それでは、二人ともそれぞれの券になります。」

 竹崎先生は、保健室のベッド使用券とコンピューター教室のパソコン昼休憩使用券を、それぞれ二人に渡した。

 なんか、僕の立場が…。 そう思いながら、僕は先程のサイダーを飲んだ。

 その後、祭り中行く先々で島崎さんと姉の幸運ぷり、僕の不幸ぷりを言われる。 僕は不幸じゃないんだがなぁ。 それを言うのなら、ほとんどの奴が不幸だろ。 そんなことを思いながら、僕達は家路に着いた。


 帰りの電車内では、今後の夏休みの予定を話し合っていた。

 「そういえば、花火とかどうしますか?」

 島崎さんが聞いてきた。

 「そうだなぁ。 正直な話、僕人混み苦手だから花火大会とかは興味ないんだよなぁ。」

 僕が言うと、島崎さんは頷きながら

 「私もそうですねぇ。 どうも人混み苦手ですね。」

 その話を聞いてきた、姉が。

 「じゃあ、なんで二人とも電車好きなの?」

 と聞いてきて、僕と島崎さんは同時に。

 「「それは、人混みということを忘れさせてくれる、電車があるから…。」」

 僕と島崎さんは、お互いを少し見つめあい、少し笑った。

 結局、結論が出ずじまいで、東貝塚に着いたので僕達は分かれた。


 そして、その夜僕が自分の部屋の机で考えしていると、

 「なにしてるの?」

 またまた僕の知らない間に僕のベッドに座っていた姉が聞いてきた。

 「うわっ! びっくりした、お姉ちゃんか…。」

 「お姉ちゃんか…って、私とあなた以外の誰が今この家に居てるのよ?」

 「そりゃあ、そうだけどさ。 それで、何を考えてるの?」

 「さっき、島崎さんと話してた今後の夏休みの予定。」

 「う~ん。 お姉ちゃんの提案なんだけどさぁ、裕樹が数年前から毎年行ってる武田尾駅を島崎さんに紹介したら? 裕樹と、島崎さん似たような趣味のうえに性格や苦手なところも似てるし。」

 「なるほど、確かに武田尾駅良いかもね。」

 僕は、旅の計画ノートに書いていく。

 「あと関空展望ホールとか。 ほら、夜の景色とか綺麗じゃん?」

 「それだったら、あべのハルカスとかは梅田スカイビルからのほうがよくない?」

 「そっちだったら、人多いわよ。」

 「あぁ、確かに…。」

 「後は、裕樹と島崎さんは電車旅好きだから、軽く大回りとかしてみたら? JRの関西1日乗車券で。」

 「なるほど、ルートとしたら和歌山に行って、そこから和歌山線に乗って…。」

 「そうそう!」

 1時間弱、姉と二人で計画を作りそれをよくよく見返すと…。

 「これなんだが。 電車オタク流のデートコースに見えない?」

 姉に聞くと、姉は少し慌てながら

 「い、いや。 私にはそう見えないけど?」

 「そうかなぁ?」

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