17話 夏休みはどこに行こうか…

7月13日(金)


 1学期の期末テストが全教科返却された、僕の全教科平均はクラス平均より少し下ぐらいで、赤点は無かった。

 森野と片桐も、僕より少し高いか同じぐらいだった。 金子は、全教科クラスの上位点を平気に取っている。


 その日の昼休み、クラス内ではあちこちから夏休みの予定をどうするか。という、話が聞こえてくる。 僕は、弁当を食べ終わりボーッと夏休みの事を考えていた。

 「岸部君は夏休みどうするんだ?」

 金子が聞いてきた

 「う~ん。 今のところ、これといって無いかな。」

 「俺は、新しく出来た彼女と、1泊2日で奈良、京都に行こうかと。 そして、電車で行く訳だから岸部に案内してもろうと思ったけど…。」

 金子は島崎さんの方をチラッと見た後、僕にしか聞こえないような小さな声で

 「岸部は、島崎さんと美人の姉が居てるから、無理か。」

 「確かになぁ…。 でもまだあくまでも、金子とは違って友人だからな。」

 「はいはい。 でも、その友人という関係を、夏休みに進歩させるのが岸部 裕樹じゃないのか? それに、夏休み中の電車旅の計画の2~3はもうとっくに考えてるんだろ?」

 「確かにあるなぁ。」

 「ほんまにあるんかい! ていうか、それはこれといって無い。 と言うのか?」

 「計画だけあって、いつ行くかはまだ決めてない。 それが、電車オタクだからな。」

 「なんか。 お前すごいな、ある意味尊敬するよ。 まぁ、頑張れよ。 島崎さんと美人の姉とお幸せに。」

 そういいながら、金子は僕の肩を叩き、他のクラスへと向かった。

 「ねぇ、岸部君。」

 次に僕に声をかけてきたのは、島崎さんだった。

 「うん。 なに?」

 「放課後なんだけどさ、空いてる?」

 「僕は帰宅部だから、いつでも空いてるよ。」

 「だったらさ、駅前の喫茶店に来てくれない? ちょっと、夏休みについて聞きたいからさ。」

 「うん。わかった。」


 そして放課後、僕は約束通り喫茶店に行くと、以前の時と同じ場所に彼女一人…、いやもう一人居てる?

 僕は席の方へ行くと、島崎さんと姉が座ってた。

 そして、僕に気づいた姉が。 コーヒーフロートのスプーンを僕に向け

 「遅い。 女子二人を待たせるとは、一体どういう事か!」

 「掃除があったんだよ。 あぁ、えーと僕はレモンティーのサンドイッチのセットで。」

 僕が注文を頼み終わると、姉は

 「さぁ。二人に集まってもらったのは、他でもない。 夏休みについて。」

 「二人に集まってもらった。 というか、僕はお姉ちゃんが来るなんて、聞いて無かったけど。」

 「まぁまぁ、そこはおいといて。 夏休みどこ行きたい所とかある?」

 島崎さんが手を挙げて

 「はい! 電車の本数は多いけど、あまり人がいない駅みたいなところ行きたいです。」

 「裕樹、そういうところある?」

 姉が聞いてきた

 「う~ん。 そうだな、大阪近郊だと、JR宝塚線の武田尾駅とか、大和路線の河内堅上、嵯峨野線の保津峡、阪和線の山中渓とかじゃないか?」

 「その4つの駅、私行ったことないわよ?」

 「私もないです。」

 二人が言ってきた。

 「そりゃそうだよ。 河内堅上、保津峡、山中渓は撮り鉄で、武田尾駅は一人旅の時にふらっと寄った駅だから、特に武田尾駅は誰も居なかったからなぁ。 あの時は孤独だったなぁ。 でも、寂しくはないんだよ。 電車の半数が多いから。」

 「はい。 お待たせしました。 レモンティーのサンドイッチセットです。」

 武田尾駅の思い出話をしていると、レモンティーとサンドイッチが来た。 サンドイッチは、お皿の上に、結構大きめのたまごサンドが4切れ乗っていた。

 「お先!」

 姉が一切れ取っていった。 まぁ、別にいいけど。

 島崎さんは、サンドイッチを見つめていたが手にはつけなかった。

 「島崎さんも、食べてもいいよ?」

 「いいんですか?」

 「うん。 ここまで、大きかったら3切れも食べきれないし。」

 「だったら、一切れ貰いまーす。」

 島崎さんは、たまごサンドを一切れ取り、口に入れた。 そして、余程美味しかったのか、はたまたお腹が空いていたのかは分からないが、島崎さんはとても笑顔で食べていた。


 「そういえば、阪高夏休みっていつでしたっけ?」

 島崎が姉に聞いた。

 「確か、7月21日じゃあなかったかな。」

 阪高夏休みとは、阪和高校の先生方と生徒との親睦会みたいなもので、出店などは先生だけで行い、毎年何があるかは分からない。

 「去年は、どういうのがあったんですか?」

 「う~ん。 確か食べ物だったら唐揚げにお好み焼き後はフランクフルト、他には生徒指導部主催のくじ引きとかがあったかな。」

 「意外と普通なんだな。」

 「あっ、そうだ。 あと射的がその景品が、保健室のベッド昼休憩使用券とか、コンピューター教室のパソコン一週間使い放題券とかがあったな。」

 「いきなり、学校からの生徒へのご褒美みたいになりましたね。」

 「とにかく、何があるかは当日にならないと分からないけどね。 裕樹は、夏休みらしいイベントとか知らない?」

 姉が聞いてきた。

 「阪高夏休みの翌日になるけど、和歌山市での港まつりとか、富田林市のPLの花火大会とかかなぁ。」

 「日付は?」

 「港まつりが7月22日、PL花火大会が8月1日だったと思う。」

 「花火大会は、両方とも行きたいですね。」

 島崎が言ってきた。

 「確かに、両方とも電車で行けるからな。 無理ではないけど、PLの花火大会は少し考えないといけないかも。」

 「どういう事ですか?」

 「PLの花火大会は、結構有名だから実際に富田林市まで行くと大混雑で、人ばっかりだし。 帰りも、電車も結構混むから。 遠くの高い所から見るといいんだよ。」

 「例えば?」

 姉が聞いてきた。

 「例えば、あべのハルカスとか、梅田スカイビル、行き方が分からないけど、金剛山か。」

 「裕樹君は、港まつり、PLの花火大会と、共に見た事あるんですか?」

 「一応両方ともあるね。 何年か前に港まつりは行ったし、PLの花火大会は見に行ったというより、見えたになるんだけど。 2年前に、一人旅の帰り阪和線の天王寺~鳳で運転見合せになった事があって、仕方がないから新今宮駅前から南海本線で羽衣いって、そこから羽衣線で鳳行って、帰って来た事があって。 そのときに、堺の辺りの高架区間で見た事があったな。」

 そう、実際に筆者も南海本線の堺以南の高架区間でPLの花火を見た事がある。

 「いつも思うけど、PLの花火は見たって言わないでしょ。」

 確かに姉の言うとおりだ。


 その後の話し合いの結果、とりあえず阪高夏休み、港まつりと、旅に1,2回行く事になった。


 時刻は5時班を周り、僕達は家に帰った。

 そして、僕達姉弟は夕食を食べている途中、姉が思い出したように。

 「あっ、そういえば。 昼間、お母さんから電話があって。 おばあちゃん良くはなってるけど、もう少し様子を見る為に夏休みの終わりぐらいまで帰れないって。 お父さんも、秋にならないと帰れないって。」

 それを聞いた、僕は小さな声で無意識のうちに

 「別に帰って来なくていいよ。」

 と言い。 それを聞いた姉が、少し顔を赤らめて、モゾモゾしながら

 「そ、それって、私と…。」

 と言っている。

 「どう解釈しようと、お姉ちゃんの勝手だよ。」

 そう言いながらも、姉の言うとおりなのかも知れない。 あの夜以来、僕は姉の事を好きになり始めている。 だったら、島崎さんとは、友人のままなのか。 と言われると、僕にも分からない。 なぜなら、僕は、二人の事が好きなんだと、思うようになっているからである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る