16話 岸部姉弟
「私達、二人の本当の関係を覚えてる?」
姉の言うことが、僕には分からなかった。
「本当の関係って?」
「私達が、本当の姉弟じゃあ無いって事よ。」
「えっ…。」
その瞬間、僕の頭の中が真っ白になった。
「えっ? えぇーと、姉弟じゃあないってどういうこと? お姉ちゃんと僕は、他人ってこと?」
姉は、ゆっくり首を降りながら。
「いいえ。 まったく他人じゃあいわ。 少なくとも私の名前は、岸部 結衣よ。」
「だ、だったら。 僕とお姉ちゃんの関係は!?」
「私は、あなたの従姉よ。」
今度は、脳の機能が一瞬停止したように思えた。
「つ、つまり。 僕達は従姉弟? ということ?」
姉は頷いた後、なぜ姉弟になったのかを語ってくれた。
「裕樹には言ってなかったんだけど、私の本当の父は裕樹のお父さんのお兄さんで、そのお兄さんが結婚して生まれたのが私だったんだけど、経済的な事情から生まれたばかりの私を、裕樹のお父さんに預けた。」
「でも、なんで今その話を?」
「実は裕樹がお風呂行ってる間に、本当のお父さんから電話があって。 多少は裕福になったから帰ってこないか? 返事は明日までに。って。」
「好きにしたら…。 もう、自分の部屋に戻ってくれない? もう、寝たいから。」
それを聞いた姉は、寂しそうに自分の部屋に戻っていた。
まだ、9時半なのになぜこんな事を言ったのか、僕には分からなかった。 ただ、恐らく心の中で 騙された。 と思う自分が居たからだろう。
僕は、先程まで姉が座っていた場所に座った。 まだ、温かみがあった。 僕を、この世に止めといてくれた温かみが…
少しして、僕は部屋の電気を消し、ベッドに横になった。 今日は、色々ありすぎた。 少し頭を冷やそう。
夢に入るのは早かった、いや夢というのか。 これは、今までの姉との思い出だった。
昔、同じ部屋だった頃やった、2人トランプ、オセロ、人生ゲーム…。 そして、最近では自分のベッドで寝ていて起きると、横で添い寝してたりと、姉のブラコンぷりが全快いや、今思えばただ、従弟の僕を好きだっただけか…。 好き…、好き。
姉のあの様子だったら、昔から自分が僕と、姉弟じゃあない。 と知っているようだった、つまり姉の僕へのあれは、家族愛なのでは無く…。 いや、そうじゃあなくても。 僕は、そう信じたい。 信じたかった。
時計を見ると、時間は12時だった。 この時間だったらまだ…。
僕はベッドから出ると、自然と姉の部屋の前に向かっていた。
姉の部屋のドアをノックすると、先程と同じような寂しげな声で
「どうぞ。」
と聞こえたので、僕はドアを開け部屋に入ると、電気は消えていたが、姉がベッドでぐったりと座っていた。 僕は、姉の心境を全て把握した。 長年、一緒に暮らしてきたからか、はたまた僕も同じ気分だからか。 僕には分からない、今日は分からないことはがりだ。
僕は、姉の近くまで行き少し間、目を合わせた後。小さな声で
「お姉…」
僕は、少し言いかけた後少し首を振り、大きな声で
「結衣。 大好き。 ずっと、一緒に居て!」
「えっ! うわっ!」
僕は、告白めいた事を結衣に言った後、勢い良く抱きつくと、その衝撃で二人ともベッドに倒れた。
そして僕は、普段より少し小さいぐらいの声で
「結衣。 大好き。 僕と、ずっと一緒に居てください。」
僕は、そう言うと結衣の顔に自分の顔を近づけ、あと少しで唇が当たりそうなところで、結衣は自分の右手を、二人の唇の間に入れ
「私は、裕樹の真意が分かったから充分よ。 これからも、裕樹のお姉ちゃんやってあげるわ。 だけども、今だけは…。」
そう言うと、結衣は二人の唇を合わせた。 その時間は、実際には長かったのか、短かったのか僕には分からなかったが、ただ結衣と僕の、お互いへの気持ちは確かめあえた。 それだけは、確実である。
結衣、姉は唇を離すと。
「この事は、島崎さんには内緒ね。 さぁ、寝よ。」
そう、言うと僕をまるで抱き枕のように、強く抱き締めながら寝始めた。 しかし、今日はお互い離れないように、抱きついていた…。
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