1話 陰キャが青春を堪能するのか…

2018年の春

 「それでは、皆さん。 改めて、ご入学おめでとうございます。 私は皆の1年E組の担任の竹崎

和之(たけざき かずゆき)です。担当教科は、現代国語です。 一年間よろしく、お願いします。

 それでは、早速ですが。 一人ずつ、自己紹介をしてもらいましょう。では、出席番号1番、岩原君。」

 「はい、俺は東貝塚中学からきました…」

  僕、岸部裕樹は、ここ大阪府立阪和高校に入学した。 この高校は、至ってなんの変哲もない高校だ。偏差値は平均より少し下ぐらい、部活は少し盛んだが、だからといって、全国大会レベルでは無い。 地方大会がやっとのレベルだ。

 僕がこの、高校に入学した理由も、学業の関係である。


 僕は、幼い頃からしゃべるのが苦手だった、それが原因で同級生から、精神的ないじめを受け。 父親からは、暴力を振るわれた。

 それが原因で、自称 人間恐怖症となり、それが原因で、しゃべりが苦手になっていった。

 そんな僕は、何度か自殺という、選択肢を考えたことがあった、しかし姉や、少なからず居る、友人達のおかげで、早くも16年近く生きている。 恐らく、そのどちらかが、欠けていたら僕の人生は、小学生で終わっていただろう。


 そんな、僕にとって、一番嫌いな事は、自己紹介である。気づけたば、僕の前の生徒が今自己紹介をしていた。 僕は、何回も深呼吸をした。 こうすると、少しはマシになるのだ。

 「はい、ありがとうございます。 それでは、次の岸部君。」

 「えー、はい。 えー、僕は東岸和田中学から来た、えー、岸部 裕樹(きしべ ゆうき)です。

 えーと、趣味は、二次元と、えー、電車が好きです。将来は、鉄道会社で勤務したいと、思っています。えー、 一年間よろしくお願いします。」

 「はい、ありがとうございました。 少し、緊張していたのかな?」

 僕は、こくっと頷いた

 「なるほど、まぁ、君みたいな生徒も、今まで何人もいたけど、卒業する時には、すらすらと話せられるようになっていたから、君も頑張って。 じゃあ、次の…」

 

 時は進み、6月のある日の昼休み、僕はクラス内での友達である、岩原 秦、片桐 瞬人、森野 優と共に、弁当を食べていた。

「そういえば、岸部。 最近、結構普通にしゃべれるように、なってきたな。」

 と、岩原が言ってきた

 「まぁ、このクラスにも慣れたってことかな。」

 「でもよ、中学の頃は、ほぼ発表なんか出来てなかったやん。」

 「あっ、そうなん?」

 森野が聞いてきた。

 ちなみに、このメンバーで唯一、中学が違うのが森野であった

 「そうなんかな? あまり、嫌な思い出は掘り返したく無いからなぁ。 どうやった? 片桐。」

 「確かに、お前は少しずつでは、あるが人間恐怖症を克服していると、思うぞ。」

 片桐が言ってきた

 「確かに、そうかもな 。」

その日の終わりのショートホームルーム(以後SHR)担任の竹崎先生が大量 の画用紙を持ってきた。

 「先生、それは?」

 片桐が聞いた

 「初日に、自己紹介プロフィールを書いただろ? それを、後ろに貼ろうと思ってな。」

 そういえば、そんな物を書いた記憶があるなぁ。 まぁ、高校に入っても、プロフィールを書いたうえ、後ろに貼るとは思わなかったが。

 

 次の日の昼休み、クラスメイトの数人は自己紹介プロフィールを、見ていた もちろん、僕もその1人だ。

 「おい、岸部これ。」

 岩原があるものを見つて、それに指を指していた。 それを見ると、他のクラスメイトのプロフィールだった。

 「島崎 理沙か、今の僕の隣の席だな、まるで昔の自分を見ているかのように、静かだよなぁ。」

 「それより、島崎さんのプロフィール全部読めって!」

「えぇ…」

 趣味は、旅に出ること、アニメ観賞

 嫌いな場所、遊園地

 好きな食べ物、オムライス

 嫌いな食べ物、辛いもの

 一言、誰か一緒に旅に出ませんか?

 

「はぁ? どいうこと?」

 僕は、思わず声が出てしまった。

 クラス中を、見渡したが、彼女は居なかった

 「これってさ、お前を誘ってね?」

 岩原が聞いてきた

 他のクラスメイトも

 「確かに、そうだな。」

 「お似合いかも?」

 「このクラスの、初カップルが、陰キャ同士か?」

 などと、言っている

 「はぁ? 何を言ってるの?」

 金子が俺の、耳元でささやくように言った

 「だから、お前らは、お似合いのカップルだってこと。」

 ムカッ! 中学の頃だったら、殴ってた

 「いやぁ、僕にそんな事は出来ないって。」

 僕が返すと

 「岸部以外に、旅好き…というか、1人で旅に出るの、お前しかいないじゃん。」

 ゲッ!

 「確かに、そうだな…。」

 というか、このクラス、僕と彼女を結ばせたいのか? 全員で

 「今更だけど、森野と片桐は?」

 岩原に聞いた

 「あぁ、学食にパン買いに行ってくるって、言ってたぞ。」

 「よし、僕も行こ。」

 「逃げるな!」

 学食に行こうとする、僕を金子が止めた

 「なぁ、岸部。 2つ聞くことがある。 これに答えたら、学食にでも、どにでも行ってこい。」

 「な、なんだよ?」

 クラス内が、静かになった。

「1つ、岸部は、彼女を誘うのか?

 もう、1つは、島崎の事をどう思ってるんだ?」

 「う~ん、そうだな…、両方とも少し考えさせてくれ。」

 「だったら、来週の金曜日に今の答えを俺に、言ってくれ。」

 「えぇー、私たちも答え聞きたい。」

 「そうだ、そうだ。」

 クラスメイト、いい加減うるさい

 「だったら、おれから個人的にみんなに伝えるよ。」

 金子がみんなに提案した

 「それで、いいわ。」

 「絶対教えてくれよ!」


 そんなこんなで、僕はクラスから解放され、学食へ向かった、飲み物を買いたかったし…

 「あ! あの~、岸部君。」

 学食へ、向かう途中、僕は女子に話かけられた。 僕は、その女子の方を見ると、島崎だった…、こんな所見られたら、めんどいなぁ

 「な、何かな?。」

 「あ、その話があるんだけど、放課後空いてる?」

 え? えぇーー!?

 「ま、まぁ暇だけど。」

 「だったらさ、放課後に駅の近くにある喫茶店に来てくれない?」

 「う、うん. 分かった。」

 「じゃあ、放課後。」

 「う、うん。」

本当に面倒になったな

 その後、僕は学食で、森野と片桐にその話をすると、「まぁ、頑張れ! 」だけだった。

 もしかしたら、陰キャが、最高の青春を堪能するのか…。

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