第23話 たぬきのしっぽ


ある日

不思議な宣伝広告を目にした


いかにもなスピリチュアル系の

雑誌に掲載されていたので


男は絶対にそんなものはない

と頭では分かっていても


好奇心には勝てずについつい

購入してしまった


商品名は

たぬきのしっぽ


説明書きには

そのしっぽをおしりに指すと

たぬきの妖力が使えるようになり

様々な予言や未来が見える

という


ばかばかしいにも程がある代物だ


でも男はすでに買ってしまったので

商品の到着を待ち侘びた


そして送られてきた商品を見ると


本物のたぬきの毛皮を使って

作られたであろうリアルなしっぽと

おしりに差し込むための

数センチのプラスチックのような棒

が付いている


男はあほらしくて自分でも

どうかしていると思いつつ


やはり好奇心には勝てずに

説明書通りに

たぬきのしっぽを尻に指してみた


すると

しばらくぼーっとした後

何やら幻聴や幻覚のようなもの

が出始めた


これがたぬきの妖力か!

まさかこんなものが

本当に存在するなんて!


男はとてもたぬきのしっぽ

を気に入り愛用していた


しばらくたったある日


もうひとつ購入しようと

最初に買ったサイトに連絡すると

音信不通になっていた


どうしてももう一本欲しい

男は何とかしてその販売会社

を探した


するとその会社は

麻薬密輸と詐欺の容疑で

社長が逮捕され解散されていた


警察の説明によると


たぬきのしっぽのプラスチックの棒

の部分に合成麻薬を仕込んで密輸

していたらしい


それをスピリチュアル系の雑誌で

販売する時には

普通のプラスチックの棒に変えて

何の効果もない詐欺商品として

販売していたとのことだった


男が手にした

たぬきのしっぽは


たまたま犯罪集団が棒の部分の

交換を忘れて販売してしまった

代物だった


かくして

男が愛用している

たぬきのしっぽは

世界でただひとつの珍品

となったのである・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る