第14話 祥子の家族


やっと一か月振りにパパに会える


祥子は、二日前から楽しみで仕方がなく

夜もあまり眠れなかった


祥子の父親と母親は

彼女が四歳の時に離婚をした

以来、父親とは月に一回しか会えなくなっていた


母親はシングルマザーとして懸命に祥子を育てた

そんな母親の姿を幼い頃から見ていた祥子は

心底母親に感謝していた


月に一回だけでも、実の父親に会えるなら

まだ私は幸せな方かな?


祥子は自問自答する


彼女の友人・知人には、父親が失踪したり

若くして亡くなったりするケースが何件か

あったからだ


月に一回父親と会う

年間で十二回

そんな生活が繰り返され、気が付くと時は十五年も流れ

祥子は二十歳になっていた


たった月に一回しか会えない間柄でも

そこは実の父親と娘の関係である

祥子には父親に対する隔たりは何も無かった


今付き合っている彼とゆくゆくは結婚したい

その時にはパパにはどういう風に話そうかな


祥子は、彼を父親に紹介する日の事を想像した

だけで胸の鼓動が早くなった


そんなある日

祥子は、渋谷の街中で意外な人物の姿を見た


あれっ??

パパに似ているな?

でも確かパパは今はお仕事の関係で北海道にいて

わざわざ月に一度私に会いに来てくれている状況だから

パパの訳がないよね?


頭の中は軽いパニックで疑問だらけであったが

とっさの反射で、気が付くと祥子は父親の後を

つけていた


父親は繁華街から一本細い路地を入った

五階建ての古びた雑居ビルに吸い込まれていった


エレベーターの動きで、何階で降りたのか

祥子は確認して、三十分程待ってから

エレベーターに乗った


そのビルの三階で降りると

店舗は二店しかない


エレベーターから向かって右側の店舗は

テナント募集中の看板が掲げられているから

必然的に、父親が入った店舗は左側の店舗

という事になる


そこには

ニコニコファミリー

という表示がドアの扉についていた


全く状況が呑み込めない祥子は

心臓がチクチク痛くなる程の動悸で我にかえり

慌ててその場を離れた


しかし、まったく予期せぬ展開に

完全にパニックになった祥子は

眩暈と吐き気に襲われ動けなくなった


彼女の身体の反応は、見てはいけないものを

見てしまったということを本能的に告げていた


何とか最寄りのスタバに倒れこむように入った祥子は

お気に入りのひとしなを飲みながら

先ほど起きた出来事を必死で振り返った


そして、スマホで先程見たドアの表示のネームを

検索すると、そこにはレンタル家族を運営している

会社との説明があった


あっ!

この写真!


写真を見た瞬間、祥子は全く息が吸えなくなり

過呼吸発作のようにひゅーひゅーと喘いだ


驚いた店員が寄ってきて、抱きかかえられ、

水を飲ませて貰って何とかまた息が吸えるように

なる


落ち着いた祥子は突然両親が離婚した時の

記憶をおぼろげながら思い出した


そういえば、離婚して一年か二年位は、パパとは

会っていなかったはずだ

確か、パパが月に一回訪ねてくるようになったのは

学校で、パパがいない事によって幼稚園でいじめられている

と母親に話した後だった・・・


全てがピンと繋がった


ニコニコフアミリーのサイトに紹介されていた

その会社の代表の写真が、祥子の父親の写真であった


そう

実の父親だと思っていた祥子の父親は

母親が祥子がいじめられたり、寂しい思いを

しなくてもすむようにと、苦し紛れに手配した

レンタル父親だったのだ







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