第2話 散歩をする男

その男は

毎朝七時キッカリに

漁港沿いの遊歩道を

散歩している


雨の日も

熱い日も


ただひたすら

黙々とひとりで

歩いている


見たところ

また二十代後半位なのに

毎朝の散歩は違和感あるな

とは感じていた


そんなある日

部活で早番登校中の

男子中学生の集団が

その男をからかっている

姿を目撃した


そっと近寄って話に

耳を傾けると

その男はどうやら

軽い知的障害がある

ようであった


からかいは

よくあるようで

その男はこう言っていた


いくら

ぼくをからかったり

いじめたりしても

無駄なんだから


お母さんから


社会に出たら

ぼくみたいなひとは

もっともっと

バカにされて苛められる

って聞いてるもん


お母さんも

中学生のイタズラ位

平然と無視出来るように

ならないとね

って言うもん


だから

君たちが

いくら僕をからかっても

散歩は止めないんだもん


だってお母さんとの

約束だから


もっともっと

強く生きていくって

約束したんだから


だから

なにが有っても

毎朝の散歩は

止めないんだ!


彼の発する言葉が

終わった瞬間


ニヤニヤにやけている

中学生は

もう誰一人として

いなかった

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