第16話 ドラキュラ
今からたった10年後の日本での話
21世紀になってからの科学・医学・テクノロジーの加速は
とどまるところを知らず
この頃には、今では考えられないような事が当たり前になっていた
最初に発見した科学者も、最初は半分冗談のつもりで
遊びでこの研究を始めた
理由もシンプル
中世ヨーロッパでのドラキュラ伝説は、もしかしたら実話だったのではないか?
と文献を調べていてふっと気になったからだ
人間の血には
不老不死や若返りの鍵が隠されているかもしれない
なぜか彼は本能的にそういう予感がした
幸いヒトゲノムの研究もほぼほぼ解明されており
日々未知のサーチュイン遺伝子が発見されている状況下では
研究のヒントは豊富にそろった
まずは既存のサーチュイン遺伝子のDNA配列とスイッチを徹底的に探した
すると一年も経たずに「鍵」は見つかった
加齢と共に破損して再生されない遺伝子と
減少してしまう「NDA」というたんぱく質の中にある
eNAMPTと呼ばれる酵素にその鍵はあった
つまり、加齢と共に体内合成出来ずに減少していくeNAMPTを
人工的に体内に取り込めば若返る、という事だ
eNAMPTはどこに大量に存在するかというと
それは、若い人の血液中、である
こうして10年後の日本では
中世のドラキュラが
若い女性の生き血で命を繋いだように
資産家や高齢者の富裕層は
こぞって若く健康な男女の血を求め
血の値段はみるみる高騰していった
その値段は
ほんの10mlで10万円
かくして
お金が無くても
学歴が無くても
才能が無くても
健康と若ささえあれば
学費や生活費に困らずに
若い人本来のチャレンジングな人生が
誰でも送れるようになっていた
まさに
神様が人間に備えてくれたギフトで
人類史上類を見ない程の富の大移転が起こり
若者が生き生きと輝いて生きられる時代が
やっと実現したのである
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