第12話 森と人間


気の遠くなるような長い時間

ずっとそこに存在している

ある森に

一人の人間がやってきて住み着いた


その男は

森から与えられる木や葉で

住まいを作り

森に存在している植物や動物を頂き

命を繋いで快適に生活をしていた


生きるために必要な全ては

その森に有った


ある日

よそからやってきた男が

森に住み着いている男の暮らしを

しげしげと観察し

男に申し出た


この森は快適そうだ

この森を俺にくれ


住んでいた男は

元々争いごとや競争が嫌いな気質だったため

後から来た男に森を明け渡した


後から来た男は

前の男とは異なり

森の食べ物を好き放題食べ散らかし

自身の趣味として動物達を

ハンティングしていった


そんな生活が数年続き

とうとうその森には男一人を

養っていく力はもう残っていなかった


程なく男は飢えに苦しみ

息絶えた


森自身は完全に息絶えた訳ではなかったが

ほんの僅かの木々や種の力で

元の姿まで再生するのに長い年月を必要とした


そして

また別の男がやってきて

森と共存して快適に暮らし始めた


それを見て

また別の男がやってきて

森のすべてを独り占めにした


そんな事が

何回も

何十回も

繰り返された


その一部始終を

二千年もの長きに渡り眺めていた

長老の木がポッりと呟いた


みんなで分け合えば

全てが余るのに

必ず

奪い・独占しようとする

人間が現れる


人間とは何と愚かな動物なのだろう

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