第26話 水
近未来の日本
水道事業が民営化されて以来
ウォーターバロンと呼ばれる
国際的な水資源独占企業に
日本国内の水は
すべて支配されていた
その監視は徹底され
こっそり川の清流に口をつけた
だけでも即刻逮捕されてしまう
自宅でバケツに雨水をためて
こして飲もうとしても
見つかれば莫大な罰金が科される
既に水道料金は
一般的な家庭の平均月収の三分の一
を占めるまでに高騰していた
一か月で水道料金が十五万円以上・・・
しかも
今までスーパーやコンビニで
気軽に安く買えたペットボトル入りの
五百mlの水は一本五千円もする
ビールの価格はここ十年ほぼ変わらず
一本三百円程度なので
もはや水の方がはるかに貴重で
高価な飲み物になってしまった
一般庶民は
水を飲むために食べ物を我慢し
生活を切り詰め、何とか命を繋いでいる
そんな世の中に変貌していた
空気と水は無料
と言われていた牧歌的な時代は
幻で有ったかのような時代に
なってしまった
もはや人々の暮らしは
生きるために水を飲むのか
水を手に入れるために人生
全てを捧げているのか
分からない程荒廃していた
もちろん
いくら温厚な日本人とは言え
水を自由に飲めない理不尽な暮らしに耐え兼ね
各地で暴動や反対運動が
湧き上がった
しかし
軍隊の実行力も支配している
ウォーターバロンの武力は
凄まじく、捕まった人間は
たいてい行方不明になっていった
ウォーターバロンに抵抗する
レジスタンス達は
同胞を救うべく
やっとのことである装置の開発に
成功した
見た目は
通常の災害時用のストロー
とほぼ変わらない
しかし今や
災害用ストローで飲めるような
泥水でさえ
この国では厳格に監視されている
レジスタンス達が開発したストローは
泥水を飲めるようにする機能ではなく
水の十分の一以下と
遥かに安価な
ビールを
水に変えてしまうストローであった・・・
ショートストーリー きよじろう @kiyogirou
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