合鍵の季節
鍵を盗み出してきた
今あいつが家に帰ったら部屋の鍵は閉まっている上に部屋には入れないわけだが
つまり家には帰れないわけだが
鍵もかけず外出する方が気が知れない
鍵の空いてる部屋に入って鍵を盗むのはもはや自然の摂理である
(「盗む」と言ってしまうから犯罪っぽく聞こえてしまうだけなのだ)
駅から歩いて二分ほどのところ
まだ人波もわりと多い通りにその鍵屋はあった
巨大化したドアノブのようなドアノブを押し扉を開ける
合鍵を作りたいんです
そう言うとおじいさんが
よく考えろ と言った
共同生活を始めるということは
生半可なものではない
相手にどれだけ干渉しもしくは干渉しないか
相手の生活の半分を自分色に染め上げるその浅ましさ
意識せずともせざるとも合鍵は作れるが
心の鍵ではない それはあんたが作るんだ
なんてことを言った
うざったかったので私はおじいさんを殴り倒し合鍵を作らせる
ブルーベリーフレーバーのアイ・キー(合鍵のことを英語でなんと言うんだろう)の匂いを嗅ぎながら
もはやこれは本物の鍵を超えたのではなかろうか
なんてことを思い
本物の鍵を捨て もう一本合鍵を作ってもらうことにした
合鍵の季節
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