ああ、濡れた靴下

スキニーのサイズは腰に合わせる

だからいつも裾が長い

「裾上げしてください」と頼むのがなんだか私は恥ずかしく

だぼついた裾を持て余している

雨の日はきまってスキニーの裾は靴の下まで滑り込む

地面を叩いてしたたか濡れそぼる

その「濡れ」はやがてすり減った靴のかかとから侵入し

私の靴下を静かに濡らす


ああ、雨だ

分銅みたいに重い雨が私の頭を叩いたのだ

あの雨をこのお椀に入れてどこかへ行ってくれる誰か

どこにもいない誰かはいない

サンクトペテルブルクの森の中ならば

ここが森の中ならば

いくらか許せただろうに


家に帰ったらこの靴も靴下もスキニーも

残らずすべて捨ててしまおう

そうすりゃこんな馬鹿みたいな思いはせずに済む

濡れた靴下のまま私は人のいない椅子の群れに座っていた

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