短詩10本・8 私の包丁

スペースシャトルが墜落した 夏のど真ん中に


送りのテープが千切れたる くるくると蛇の尾を引いて


緊張の余震 僕は本震から逃げ出した


久しぶりに外を歩き歩道の柵に手の甲ぶつけてしまう


兄は私の包丁に怯えない


僕は5500枚薄皮を重ね重ねただけの僕


私がもっと柔らかければ 君に触れられたのに


君の名前は覚えていない ただその後ろ姿をだけ


サンクトペテルブルクの森で僕たちはATMの残骸むくろを追った


音の鳴らない靴で君の後ろを歩いた

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