喪失・流
夏の匂いはほどかれて
ただまぶしいだけの夕陽が空に
軽くなった頭はもう左右に揺れることはなく
洗面台に落ちたその黒い塊を私は思い出していた
黒い塊を棺桶で引きずり歩いていた
足取りは重く空を見上げる余裕はなかった
その頃に比べればいまは
ただ空を眺めるだけで幸せなような気がしている
塊を洗面台に流し込む
どこかで詰まってしまうことはわかっていたけれど
熱い湯をかけると塊は少しづつ
音を立てながら流れていった
その音は今まで聞いたこともない……
死んだヒグラシの鳴き声のようだった
夏はもうどこにもない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます