私が男の子になった日
かつて私はまだ自分を自分だとよく分かっていなかった
よくガラスや鏡に直進しては激突していたし
胸の中に飛び込んでハグすることと柔らかい二の腕に噛みつくことを同じ温度でしていたし
妹といっしょにお風呂にもプールにもトイレにも入った
スカートと短パンを交互に履いていた
体の成長に無関係に精神は無成長を続け
誰かが笑っていると私も笑い
誰かが私のことを呼ぶと同じ言葉で呼び返したりしていた
ある日家におじさんがやってきて
それは親戚とかではなく勝手に家に入ってきた人だったんだけど
私はおじさんの腕の中に飛び込んだ
おじさんははじめ笑顔で私を持ち上げたが
すぐに眉をしかめ私を下ろし
「男かよ」とそう言った
ひどく呆れと落胆と怒りのこもった声で
その日から私は男の子になってしまった
誰かの笑顔に応えることをせず
青く暗い服に身を包み
もう他人と身体を触れ合わせることはなく
妹が女の子だということを知り一人トイレで嘔吐した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます