私が男の子になった日

かつて私はまだ自分を自分だとよく分かっていなかった

よくガラスや鏡に直進しては激突していたし

胸の中に飛び込んでハグすることと柔らかい二の腕に噛みつくことを同じ温度でしていたし

妹といっしょにお風呂にもプールにもトイレにも入った

スカートと短パンを交互に履いていた


体の成長に無関係に精神は無成長を続け

誰かが笑っていると私も笑い

誰かが私のことを呼ぶと同じ言葉で呼び返したりしていた


ある日家におじさんがやってきて

それは親戚とかではなく勝手に家に入ってきた人だったんだけど

私はおじさんの腕の中に飛び込んだ

おじさんははじめ笑顔で私を持ち上げたが

すぐに眉をしかめ私を下ろし

「男かよ」とそう言った

ひどく呆れと落胆と怒りのこもった声で


その日から私は男の子になってしまった

誰かの笑顔に応えることをせず

青く暗い服に身を包み

もう他人と身体を触れ合わせることはなく

妹が女の子だということを知り一人トイレで嘔吐した

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