はなればなれの顔たち

僕が君を見るとあなたはそっぽを向いた

俺はわざとお前と目を合わせずに

ずっと下を向いていた

私はうつむく彼をただじっと見つめ

次に顔を上げるときを待っている


重なっていた顔たちは

はなればなれに

郊外から郊外へ

赤から黄へ

ただそっちを見ることしかできない

そんなことでしか重なっている実感を得られないでいる

いた実感を得られないでいる


まつ毛がふれ合った

頬のうぶ毛が君の静電気にひっぱられてやわやわと立った

爪の垢すらも彼女とまざり合い

汗と涙が二人の間を螺旋を描きながら飛び交った

かつて

はなればなれでなかった頃は

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