第2話RPGから始めたら
この、ゲームの画像は素晴らしかった。
アバタの動きも とても滑らかで全く違和感がない。
それは、
このゲームは問題の起こったフルダイブ型VRのようなヘッドマウント型ではないが、付属のアイマスクと手袋を装着すると視覚・嗅覚と触覚を体感できる。聴覚は密閉型ヘッドホンだが、多分バランス感覚も これによっているのだろう。
動作は脳波検知方式、ゲーム内での発声も そこから読み取っているらしいが仕組みは よく分からない。
街中のNPCは まるで生きているように見えた。ソフトでAI機能を搭載している、と吹き出しで説明があった。
ふむ、確かにチュートリアルだ。
その『最初の街』を探索していたら、気付くと2時間近くも経っていた。
急いで初期付属の装備を整えて街から外に出ることにした。
「すげえ!」
目の前に広がるのは、まさにファンタジー。
BGMがないので、環境を すごくリアルに感じられた。緩やかな空気の流れ、微かな風の音、鼻孔をくすぐる草と土の匂い、踏みしめた大地の感触、身体の重ささえ分かるようだ。
これで未完成品だなんて信じられない。
呆然と立ち尽くしていて、またもや無駄な時間を費やしてしまった。
ふと見るとスライムがいた。水色の一般的なタイプで、高さは天辺のトンガリ部を含めても約50センチメートル、幅の直径は80センチメートルより少し小さいくらいだ。微妙に変形しながら 小さくジャンプして移動していた。
あぁ、あれだ。初期にレベルを上げるための定番モンスタだ。と思って、1発叩いた。
柔らかい感触が跳ね返って来ると共に、吹き出しでメッセージが表示された。
「
え? スライムってレベル上げ用じゃないのか。
そういえば、まだ自身のステータス画面を見ていなかった事に気付いた。
えっと、スキルは『叩く』しかない。レベルは……1か、初期だもんな。
あれこれしている間に、オレを無視して移動するスライムが目の端に見えた。
後で考えると、あまりにも理不尽であったと思うのだが、その時は無性に腹が立った。「舐められた」と感じたのだろうと思う。
オレは、スライムを追いかけて、叩いた、叩いた、叩いた……。
吹き出しは出ていなかったが、全く効いていないという事は 何となく分かった。
スライムがオレの方に向き直った。
何度も叩かれて腹がたったのだろう。まあ当然といえば 当然だったのだが。と、これも、後から思っての事なのだが。
オッ、やる気か。と身構えた瞬間、奴の触手が素早く伸びて、オレの身体に衝撃が走った。
ブラックアウト。
「ゲームオーバです。あなたは死亡しました」という吹き出しが 赤く点滅している枠内に表示された。ゲームは自動的に終了してしまった。
注意事項が表示された。
「本ゲームでは『セーブして選択肢をやり直す』という事は出来ません。途中退場する場合にのみ自動的にセーブされます。
なお ゲーム実施中に死亡した場合、そのアバタは再使用出来ませんので ご注意ください」
「え?」
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