仮想ゲーム攻略記 --全ての始まり--

芦苫うたり

第1話1月1日/チュートリアル(案内付き)ゲーム


 オレは正月休みの 暇潰しため、昨年末に買ったゲームのパッケージを開いた。

 昨年の4月末に発売された このゲームは、チュートリアルとして造られたものだ。

 それでも十分楽しめるという触れ込みだった。


 それなのに、中々のゲーマ(少し謙遜)である事を自認するオレが、発売後半年以上たった年末になって、やっと購入した。

 理由?

 そうだな、コレが案内付きチュートリアルだったから。いや違うな、それだけではない。見知らぬ製作メーカだったこと。そして、そのジャンル。加えて悪意満載の噂も その1つだ。


 発売当初、数多あまたの紙誌において このゲームは中途半端なもの、と評価されていた。

 これら 全ては、一般人ドしろうとの、ゲーマではない、部外者の評価だったのに、これに まんまと乗せられてしまったのだ。


 それらの偏見に対して、オレの側にスキがあったのも間違いない。詳しく調べる事もせずに放置していたのだから、言い訳など出来ようもない。

 

 しかしながら この作品は、発売後2週間にして コアなゲーマの中で一気に評価が上がった。

 愚かにも、オレは この事実を見過ごしてしまったのだ。


 結局、友人ツレが ドはまりして勧めて来るまで気付けなかったというていたらくだ。

 無念!


 いわく、品質が非常に高く、懇切で適切なチュートリアルでありながら、十分に堪能できる内容を持っている、と。


 加えて、そのような仕様でありながら、未だにコンプリートした者が1人もいない。という、とんでもない内容だった。


 案内付きのゲームを完済できないって どういう事だ。


 詳細に調べると、この作品、作家さんが凄いのだ。日本屈指の、いや、世界でも一流どころが揃っている。


 さすがのオレも、その錚々たるメンバの名前を確認した時には少し引いた。

 指揮をとっているひと、総監督は匿名だったけれど、このチームを率いるのは大変だったろう。

 いや本当に。癖の強い、完璧主義者ばかりを選んでいるように見えた。


 なお、完成版は鋭意作成中らしい。


 ハード、ソフト込みで20万円(税別)。なかなかの出費だった。

 これには3組の入・出力端子があり、ディスクドライブも3つある。

 本体1つで3人まで、別々に遊べるという事なんだろうか。ならば、お買い得と見るべきなのかも知れない。

 だが違っていた。3人で遊べるというのは正しいようだが、このソフトはBRブルーレイディスク3枚を使う仕様となっていた。大容量だからハードと1体にしたのだろう。


 完成版は別売りになるのだろうが、どれ程の設定容量を必要とするモノか、それを思うと、何だか ソラ怖ろしくも感じる。


 このゲームの特徴は、オンラインソフトなのに他者の介入を認めていないところだ。操作と記録ログ容量だけを無限大にした、ソロプレイ用ソフト、という立ち位置なのだ。

 つまり、プレイヤは自分自身が主人公になるわけだ。


 とりあえず、スイッチ・オン。


 まずは、っと。起動すると『ゲーム選択』の画面だ。

 乙女ゲームとRPG。

 乙女ゲームには吹き出しが付いていた。

 「キャラクタの仕様を詳細に作成する場合には『乙女ゲーム』を選択してください。乙女ゲームのによりキャラクタの性能が ほぼ決定致します」とあったが、オレは迷わずRPGを選んだ。

 乙女ゲームなど やっていられるか、バカらしい。


 アバタの作成。これも既存のキャラクタを使用する事にした。まずは試験運用、というわけだ。


 だが、オレは たった3時間で挫折した。いや、実質30分弱か。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る