第3話造り込み


 あっけに取られて画面を見ていたら、いつの間にか後ろに立っていた妹に指摘された。


 「キャラを造り込まないと、このゲーム さきに進めないらしいわよ。

 実際にやってた友人が言ってたから間違いないわ」


 「?」

 茫然として 指摘されたのと同じ言葉を呟いたオレに、あきれたような声音こわねの返事があった。


 「そうよ。造り込んで、スキルを上げて、仲間を集めて、それからじゃないと外に出ても何も出来ないそうよ。速攻で死んじゃうんじゃない?

 だって外じゃレベル1なんでしょ? 勝てる相手なんて いるわけないじゃない」


 「……じゃ、乙女ゲームの出来が大切って事か?」

 「当然でしょうね、キャラ造りは乙女ゲームでするんでしょ?」


 「……」

 確かにそう書いてあった。


 ■■■


 このゲームには個人運営の攻略ブログが思ったより多くあった。確かに妹の言う通り『造り込み』が大切、と言うより必須らしい。


 しかし このゲーム、高価ながらも上々な売行きなのに、攻略本が、未だに1冊も発行されていない。それどころか、発売から もう半年以上過ぎているのに その兆しさえない。


 何とも妙な話しだと思っていたら、某ブログに「このゲームは あまりにも自由度が高すぎて、決まったルートが見つけられなかった」とあった。

 なるほど、そうなんだ。


 でもさ、チュートリアルなんだよな、このゲーム。


 だったら……完成版って、どんなシロモノになるんだろうか。


 後で知った事がある。

 いや、このゲームの攻略ブログに載っていた事なのだが、情報元は不明らしい。

 入・出力端子が3組というのは、セーブを3つという可能性の事だ。つまり、3人のキャラを主人公に、関連付けて、遊べるという意味らしい。

 確かに接続端子の近くに常時未接続オフになっているが『関連付け』のスイッチがあった。


 オレも やろうとしたけれど、ダメだった。いや いや、同時に3つなんてオレには到底 不可能だったって事だ。


 それぞれの時間経過と 互いの関連性を調整し、個別にスキルを取得しなければならない、

 当然ステータスの調整も必要だ。その上で、キャラクタ毎にゲームを進めるなんて、とてもじゃないが出来るわけがなかった。


 ただ、これはオレだけではなかったようだ。今まで、誰も出来ていない『可能性』だけの話しらしい。


 じゃ、そんな殆どゼロの可能性など載せないでほしい。紛らわしい。

 これは、3人でも遊べるが、関連付けも不可能ではない(出来る者がいるかも知れない)。と言うのが正しいようだ。


 どこかの勇者が挑戦すれば良いのだ。


 ガンバレ!


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