仮想ゲーム攻略記 －－全ての始まり－－

第19話）６月２日／ゲーム攻略のルートがない？

　「オレがやった時、こんなの　出なかったぞ。

　そんな『再設定の部屋』なんて　なかったんじゃないかな」

　突然　左側から兄貴が声を掛けてきた。

　「ふーん。ここまでやって、やっとキャラが保存されるのか」

　兄貴は、この状態に　なった事がないようだ。私も初めてだけど。

　装着品を外し、兄貴の方を向くと、８インチの小型モニタを覗いていた。

　「他者（ヒト）がやっているゲームを覗くのはマナー違反だよ」

　私が少し強い口調で窘（たしな）めると、「そうだったな、ごめん」と謝りながら、それでも画面から目が離せないでいる。

　「多分だけど、乙女ゲームで最後まで　ちゃんと終わらないと、こうならないんじゃないかな。……他にも何か要因があるかも知れないけどね。

　これは、偶然出来たんだと思うよ」

　兄貴が　呆れたような表情で言葉を続けた。

　「ここまで造り込まないと『再設定の部屋』は発現（で）ないって事か。キャラも保存出来ないってか！　酷えゲームだな」

　その通りだった。同じキャラを使って　同じように進んでも、同じ結果にはならなかったのだ。

　何かが違っていたのだろうが　私には分からない。

　どこかでルートを間違えた？　僅かな選択ミスがあった？

　きっとそうなのだろうけれど、私には相違点を見つける事が出来ず、結局分からなかった。

　後日、兄貴も『再設定の部屋』のあるところまでは辿り着く事が出来たようだ。

　でも、兄貴も　この状態が再現不可能であることが事実だと証明する事になってしまった。

　いくら再現しようとしても出来なかったのだ。『他の要因』も、全く分からなかったらしい。

　これじゃ、攻略ルートなんて　無いのと同じじゃない。