桜のジャージとマスメディア

 ワールドカップラグビー、昨日のアイルランド戦での勝利、興奮しました。

 アイルランドの前戦の対スコットランドの試合ぶりを見て、ジャパンはメンバーを落としてスコットランド戦必勝に備えるのでは…と思っていた私が馬鹿でした。メンバーを落とすどころか、「前大会から4年間、この試合のために準備してきた」という試合前の発言がリップサービスでも大袈裟でもなかったことを前半の戦いぶりから思い知らされることになりました。


 試合内容や結果は此処で言うまでもないことですが、私の胸に刺さったのは、SOの田村 優選手の試合後のインタビューでした。

 どうやら、試合前にジェイミーHCから選手に対して、俳句を贈ったそうで、その俳句は「誰もが、アイルランドには勝てないと思っている。我らだけが勝てると信じている」という内容だったそうです。各局のスポーツニュースで、試合後の選手のインタビューを見ましたが、田村選手の発言のこの部分は、各局、軒並みカットしていました。

 しかし、このカットされた部分こそが大事な部分だったと思います。試合前の各局のスポーツニュースで、いろんなコメンテーターが「勝てます!」と言っていましたが、私たち視聴者の多くは「勝ってほしいけれど、さすがにアイルランドには…」と感じていたと思います。他のスポーツ競技でも、試合前に、やたら、テレビ局が「勝てます!」「勝ちます!」と持ち上げたり、煽ったりした挙句、結果が伴わないことを永く経験してきているせいもあります。

 しかし、前ロンドン大会の南アフリカ戦で、奇跡の勝利を収めたときに、「奇跡」を謳ったのはマスメディアで、それを真に受けたのは私たち一般ピーポーでした。当のチームジャパンだけが「奇跡ではない」という自覚を持っていたのです。

 そして、今回のアイルランド戦もしかりでした。


 マスメディアは、どうしたって、ネームバリューや過去の実績、世界ランキングを基にしてテロップを打ち、印象的な得点シーンの映像を繰り返し流して私たちを洗脳します。特に、民放のテレビ局にその傾向があります。

 しかし、実際にジャパンがどんな準備を4年間してきたのか、ということを長期にわたって取材していたのはNHKだけでした(おそらく、独占していた?)。その特集番組を放映したのはアイルランド戦の前日でした。この番組を見て、ようやく、私も「もしかして、勝つんじゃないか」って思えたのです。そして、勝ちました。それは、前回の南ア戦で謳われた「奇跡」ではなく、互角、もしくは互角以上の内容で勝ったのです。

 もちろん、勝負事なので、勝ち負けはやってみないとわからないです。しかし、選手たちが試合前に口々に言っていた自信溢れるコメントはそれだけの裏付けがあってのコメントであり、仮に、アイルランドに負けたとしても、ジャパンがやってきた準備やそこから生まれた自信には嘘がなかったのです。


 余談ですが、何を隠そう、私は、大学時代に、お遊びラグビー同好会に所属しておりまして(笑)ラグビーが何たるかは一般ピーポーよりは馴染みがあります。

 その大学時代の合宿の時に、ひょんなことから、元ジャパンの選手から手ほどきを受ける機会がありました。練習中に、私のチームメイトが、その元代表にタックルしたのですが、彼が着ていたウインドブレーカーに指が掛かって破いてしまって、その下に着ていた桜のジャージを垣間見て興奮しました。元代表のその方は「いいよ、いいよ、気にしなくて」と笑っていましたが、その後に、破いたチームメイトに思い切りタックルをかましてぶっ倒していた姿を見て「あゝ、俺じゃなくてよかった」と胸を撫で下ろしました(笑)

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