概要
大学生となった今では起伏に乏しい生活を送っており、せっかく入った第一志望の大学でこれといった手ごたえなく一年目を終える。
そんな中、二年目に入ってフランス語の授業で出会った光蟲冬茂は、巷の爽やかな学生たちとは一線を画する独特な性格の男だった。
光蟲との交流や、囲碁部および茶道部の活動を通じて、悦弥の生活は徐々に色付いていく。
作者の実体験を脚色して描いた、リアリティの強い長編小説。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★ Very Good!!平坦路、時々、山道…そんなイメージの生活です
一人称で淡々と進む大学時代に、時偶、急勾配の坂を登り、下り坂を滑り落ちるような小学生時代が挟み込まれているストーリーです。
難読漢字や言い回しがインテリ然とした雰囲気を出しつつも、年相応の粗暴な理屈を振り回す小学生時代と、行動が変わっている大学生時代が、いいバランスです。
小学生時代にハラハラし、大学時代にホッとする…それが繰り返されるのは、13万字超の物語も、ジェットコースターのように一気に読み切る事ができます。
季節が大見出しに書かれているけれど、読んでいく中で、その季節を感じさせられる事がない点に、平坦で、しかしそれが大事だと思える大学生活の印象を受けました。 - ★★★ Excellent!!!大学生時代と小学生時代、善意と悪意に囲まれたそれぞれの悩みと救いとは?
※普通のレビューは、他の人におまかせしますよよよ。
光蟲君という生涯の友との出会い。
呼吸するように毒を吐く光蟲君との掛け合い、何気ない会話こそがこの小説の魅力・・・だったはず。(企画段階では)
それなのに、思ったより光蟲君の出番が少なかったことが非常に残念であ~る。
ナルシストな作者は、やはり自分を主役にしないと我慢できなかったようだ。
まあ、カクヨム公開前も含めて今まで読んだ小説の主人公は、姿形を変えてもみんな一緒だからね。流石だぜっ!!
そんな作風の中では本作が間違いなく質・量ともに最高傑作で、これを超えるモノはもう出ないだろうと思う。たぶん
(結局、最新作が出る度に同じ事言ったり…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ありふれた大学生活で、怠惰と充実と、そしてほんのささやかな成長
幼い頃、担任教師からの暴行や、高校生活での失敗から、どこか何に対してもイマイチ本気になれない学生、池原悦弥。
囲碁と茶道のサークルに属するものの、双方とも中途半端にこなすだけで、流されるまま流れるままに、惰性で日々を過ごすキャンパスライフ。
そんな中、授業で出会った青年、光蟲の一線画した生き方に影響され、彼は少しずつだがサークルに対して誠実に取り組むようになって行く。
徐々に関わりが深まっていくサークルの仲間たち。徐々に充実していく日々に、彼の心にわずかに情熱が宿っていく。
半笑いの矜持を抱えながら、彼は囲碁と茶道に今日も精を出す。
リアリティがある大学生活の中で描かれる一面一…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これは語られることが無かった、ある親友への述懐である。
この話は、光蟲冬茂という光が池原悦弥という影を浮き彫りにする作品である。主人公池原悦弥が小学生時代に受けたいじめは、光蟲という存在がいなければこれまでも、これからも決して語られることはなかったのだと思う。
話の構成としては最初に大学時代の池原の日常を描いている。人付き合いに無関心で自信の興味の範疇で生を満喫しようとする彼は、囲碁と茶道の二つ(あと光蟲)には興味を持っており、それらを軸に話が進む。
池原は過去の栄光に囚われるタイプの人間である。また、自分は優秀だ(った)という自負がある。第八話で高校時代は優秀な生徒だったという描写がある。“勉強は”という但し書きがついてはいるが、大学…続きを読む