半笑いの情熱

作者 サンダルウッド

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★★ Very Good!!

読んでいて非常に苦しかった。それでも最後まで読み切ってしまったのは、作者様の硬質で美しい文体に導かれたのだろうと思います。

物語の前半、大学生編。
静かに穏やかに過ごす日々が綴られています。囲碁がメインテーマで、私には知識が無いもので理解の足りないところもあるかとは思いますが、それでも複雑な頭脳戦の空気感は伝わります。そんなシーンが幾つも描かれ、気の合う友人との何気ないやり取りも交えて日々は進むのに、どこか突き放したような渇いたものを感じます。

後半、小学生編。そこでようやく、前半感じ続けた渇きの理由を知ります。かなりきついです。目を背けたくなる。どこまでが実体験でどこからが創作なのか、身震いする場面が連続します。小学生の彼は、回りをやや見下すような言葉を振りかざし、けれどそれは、彼の心を守るために取った唯一の武器だったのではないかと、読み終わった今は感じています。

時間を置いて、もう一度拝読すれば、また違う景色が見えるのでは無いか。そう思います。

Good!

 筆者の実体験に基づいているという物語は、思わず身を乗り出してしまう程のリアルさがあります。

 大抵の人は通っていない道ですが、まるで小学校を追体験するような気持ちになります。

 その筆が描く物語ですから、小学生時代の賢いと言うよりも小賢しいと言った方がいい子供だった事、劣った者として書きがちの教師や同級生の事を、ただ単なる自己肯定にしていません。

 小学生時代があるからこそ、大学で知り合った光蟲との交流、囲碁との付き合い方に光明が見えます。

 web小説の世界では珍しい現代ドラマ、引き込まれる純文学です。

★★ Very Good!!

 一人称で淡々と進む大学時代に、時偶、急勾配の坂を登り、下り坂を滑り落ちるような小学生時代が挟み込まれているストーリーです。

 難読漢字や言い回しがインテリ然とした雰囲気を出しつつも、年相応の粗暴な理屈を振り回す小学生時代と、行動が変わっている大学生時代が、いいバランスです。

 小学生時代にハラハラし、大学時代にホッとする…それが繰り返されるのは、13万字超の物語も、ジェットコースターのように一気に読み切る事ができます。

 季節が大見出しに書かれているけれど、読んでいく中で、その季節を感じさせられる事がない点に、平坦で、しかしそれが大事だと思える大学生活の印象を受けました。

★★★ Excellent!!!

※普通のレビューは、他の人におまかせしますよよよ。

光蟲君という生涯の友との出会い。
呼吸するように毒を吐く光蟲君との掛け合い、何気ない会話こそがこの小説の魅力・・・だったはず。(企画段階では)
それなのに、思ったより光蟲君の出番が少なかったことが非常に残念であ~る。

ナルシストな作者は、やはり自分を主役にしないと我慢できなかったようだ。
まあ、カクヨム公開前も含めて今まで読んだ小説の主人公は、姿形を変えてもみんな一緒だからね。流石だぜっ!!
そんな作風の中では本作が間違いなく質・量ともに最高傑作で、これを超えるモノはもう出ないだろうと思う。たぶん
(結局、最新作が出る度に同じ事言ったりして。)
性別が変わろうとなんだろうと毎回主人公=作者の構図だから、さすがに限界がある。飽きるし、お腹イッパイになるんよ。

まあ、主人公が光蟲君なら全然飽きない気もするがね。
光蟲君との飲みの席での会話の垂れ流しエンドレスの方が、ファンとしては嬉しいぜ。絶対面白いし。
脱・主人公=作者が出来たら、まさに新境地と言えるだろう。
スピンオフとか、次に期待だ。

ただ、大学生と小学生の時の両方の話があったのは、少し意外だったから良かったな。この意外性こそが最大の魅力かねー。作品内でも。


ズルしたらまともなレビューになってなかったし。
m(^(人)^)mすまぬ

★★★ Excellent!!!

漫然とした大学生活。暗いトンネルから抜けることができない小学校時代。

不思議と重苦しさを感じさせないのは、上質な文章と、良い効果を出している難読漢字、瑞々しい自然描写、時折入り込んでくる友人との喫茶店での自然体の会話が、そうさせているのかもしれません。

ぜひ、ラストまでお読みください。それまでの苦しい道のりが、このラストを彩る過程だったことを知ることができますから。

読み終わった後には、ルノアールに行ってみるのも良いかも。

★★★ Excellent!!!

 幼い頃、担任教師からの暴行や、高校生活での失敗から、どこか何に対してもイマイチ本気になれない学生、池原悦弥。
 囲碁と茶道のサークルに属するものの、双方とも中途半端にこなすだけで、流されるまま流れるままに、惰性で日々を過ごすキャンパスライフ。
 そんな中、授業で出会った青年、光蟲の一線画した生き方に影響され、彼は少しずつだがサークルに対して誠実に取り組むようになって行く。
 徐々に関わりが深まっていくサークルの仲間たち。徐々に充実していく日々に、彼の心にわずかに情熱が宿っていく。
 半笑いの矜持を抱えながら、彼は囲碁と茶道に今日も精を出す。

 リアリティがある大学生活の中で描かれる一面一面と、それに対してぼんやりと思う池原の心情は、どうでもいいことばかり。だけど、それが実に心に沁みる。
 どこか同じ繰り返しの日常に、どうでもいいことを思う彼に、思わず共感してしまう。ゆったりと文章は、独特のリズムで読者を引き込む。
 そして何より、茶道や囲碁に対する造詣が深く、素人が読んでも納得してしまうほどの説得力がある。全てがかみ合い、独特の作品を作り出している。

 繰り返しの日常に、ささやかな情熱がひっそり花咲く作品だ。

★★★ Excellent!!!

一人称視点の素晴らしさを改めて感じる良作です。
主人公の感情や価値観をじっくりと静かに知ることで、物語により没頭することが出来ました。
知的な主人公に相応しい叙述と繊細な描写で、この主人公は作者様そのものではないのかと錯覚してしまう程でした。
語彙も大変豊富で美しい文章ですので、純文学が好きな方には是非読んで頂きたい一作です。
……一言で表すと「読みやすいしこんなんめっちゃ好き」です!!

★★★ Excellent!!!

 この話は、光蟲冬茂という光が池原悦弥という影を浮き彫りにする作品である。主人公池原悦弥が小学生時代に受けたいじめは、光蟲という存在がいなければこれまでも、これからも決して語られることはなかったのだと思う。

 話の構成としては最初に大学時代の池原の日常を描いている。人付き合いに無関心で自信の興味の範疇で生を満喫しようとする彼は、囲碁と茶道の二つ(あと光蟲)には興味を持っており、それらを軸に話が進む。

 池原は過去の栄光に囚われるタイプの人間である。また、自分は優秀だ(った)という自負がある。第八話で高校時代は優秀な生徒だったという描写がある。“勉強は”という但し書きがついてはいるが、大学も上位私立に入り、社会人になった後も大きく道を外さないかぎりは、彼は賢いのでおおっぴらにはしないにしろ、死ぬまでエリート意識を持ち続けそうな人間性である。ただ、この性格も、後々の展開を読んでいけば、仕方のない癖のようなもののように思えてくる。

 ちなみに、大学時代にはルノアールなどの喫茶店が出てくるが、私はこの小説を読んで初めてルノアールに足を運んだ。

 そういった無気力ながらも淡々と過ぎていく大学時代から、話は小学生時代に移る。
 小学生時代、彼は担任である首藤にイジメられる。理由は色々あるだろうが、要因の一つは他人とズレており、可愛くなかったからだと思われる。池原少年は周りよりも大人びており、首藤や取り巻きのクラスメイトたちを自分よりも精神年齢が幼いと思いこむことで自我が壊れないよう保っていたのではないかと思われる。

 さらに、池原少年はただイジメられるばかりではなく、首藤の奸計を出し抜いて見せるという賢さも持っていた。
 しかしどれだけ耐えても、池原少年に降りかかる理不尽はまだ幼い彼のキャパシティを超えていってしまう。そして限界を超えた時、彼の中で何かが壊れてしまう。

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